オシャレな遊びとして、生涯にわたって付き合える趣味として、競い合いながら上を目指すインドアスポーツとしても楽しめるビリヤード。その幅広く奥の深い世界と魅力を、6回に渡って「ビリヤード場」「レッスン」「コミュニケーション」「イベント」「トーナメント」などのテーマごとに紹介していきます。ビリヤードをこれから始める、また始めたばかりの方は、ぜひ良きビリヤードガイドとして、既にビリヤードが大好きなプレイヤーの皆さんは、新たな魅力を発見する気付きの機会として下さい。Enjoy more billiards!!
ポケットビリヤードは、キューを使って手球を撞いて狙った的球をポケットに落とすことが基本のプレー。ただ、この動作があまり日常的ではないため、初めてプレーした時には、見よう見 まねでやってはみるものの、誰もが身体に違和感を覚え、不自然な動きになってしまうものです。
何事においても基礎が重要であることは言うまでもありませんが、ビリヤードを楽しくプレーするため、上達していくためにも、実はビリヤードを「習う」ことはとても効果が高いのです。
では、実際に習ってみようと思い立った時にはどうすれば良いのでしょうか。ビリヤードを教えてくれる存在は、ビリヤード場にいる上級者からお店のスタッフ、専門のインストラクター、プロプレイヤーまで様々にあります。そして、もちろん全くビリヤードが初めてという方、遊び
でやっていたけど、もう少し本格的にやってみたい方、なかなか上級者への壁を破れない中級者のプレイヤーにも、必ずピッタリなインストラクターがいて、今もどこかのビリヤード場だった り専用の場所でレッスンを行っているのです。
……ということで、今回は「ビリヤードを習う」ことをテーマに、ビリヤードの世界には、どんなインストラクターがいて、どんなプレイヤーに向けて、何をレッスンしているのかを探って いきます。
協力頂いたのは、プロプレイヤーを中心に10名の専門プロインストラクターが、多種多様なニーズに応えて、継続的にビリヤードレッスンを行っている『(株)バグース』。その中の3店舗、『バ グース吉祥寺店』、『バグース道玄坂店』、『バネバグース渋谷宮益坂店』にお邪魔して、塙圭介プロ、西尾祐プロ、中島美秀プロが行っているビリヤードレッスンの現場を取材させて頂きました。
まず最初にお邪魔したのが、『バグース道玄坂店』。ここでは長らくバグース所属プロとしてあらゆるプレイヤー層にレッスンを行ってきた西尾祐プロのもとにお邪魔して、ビリヤードを習うことの意味からバグースが行っているレッスンの特徴などを伺ってみました。
バグース道玄坂店にお邪魔したのは、若者達はもちろん、仕事帰りの社会人もアフターファイブを楽んでいる20 時を過ぎた頃。店内にはビール片手に楽しくプレーする方達から1 人で黙々と練習に励むプレイヤーまで、ほぼ満台の盛況ぶり。まずは、西尾祐プロがちょうど予約の入っていたレッスンの一コマを終えた所でお話を聞きました。
2001 年に入社以来、16 年に渡ってバグースでレッスンを行ってきた西尾プロ。現在はチーフインストラクターとして、ほぼ週に4回、4店舗を巡回しているとのこと。道玄坂店はその内の1つで、ここでは、レッスンが受けられるバグース全店に共通する無料のワンポイントアドバイス、30 分1,080 円(ゲーム代別)の有料レッスンの他、本誌でもお馴染みのフォーム解析ソフト
『MVP2000』を使ったレッスンを受けることができます。「17 時~22 時までが在店している時間帯です。この5時間の中で、お申込みのあった有料レッスンをやりつつ、店内を回ってお客様にお声がけしながらの無料ワンポイントレッスン、それから道具のメンテナンスチェックなどもやっています」(西尾プロ)
バグースには現在10 名の専門インストラクターが所属していて、基本的には各店舗で西尾プロと同じような形で、初めてビリヤードをプレーした方から、上級者までを対象にレッスンを行っています。「この日、この時間帯」には必ず専門のインストラクターが店内にいるというスタイルは、バグースがとても大切にしている部分。その中には「ビリヤードを習う」環境があることが、よりお客様にビリヤードを楽しんでもらえて、好きになってもらえるために重要だとの考え方があるのです。
では、ビリヤードを楽しくプレーするためのレッスン、その内容は具体的にどんなものなのでしょうか。
「レッスン内容は、受講者のレベルやインストラクターによっても様々に変わりますが……」と言いながら西尾プロが見せてくれたが、プロ自身が作ったレッスンのための分厚い資料と、ビリヤード上達のために開発された、たくさんのインストラクショングッズ、そしてMVP2000 とこれまでレッスンしてきた多くのプレイヤーのフォームやストロークのデータが入っているノートパソコン。
「バグースのインストラクターは共通のメソッドとそれぞれのメソッドを持って、どのようなお客様にも、その人に合った的確なレッスンができるように心掛けています。そして、各店舗でどんな方がどのようなレッスンを受けたのかといった情報もインストラクター間でしっかり共有するなどして、常にレッスンのクオリティを高める努力もしています。例えば僕の場合は、これまでのレッスン経験をまとめた自作の資料や、自分で試してこれはレッスンに有効だと思ったグッ
ズを使ったりしながら、できるだけ受講者の方が自身で確認できて理解できるようなレッスンを行っています」
そんな話を伺っているところへ、久しぶりにフォーム解析レッスンを受けるというお客様が到着。西尾プロはテキパキとレッスンの準備を始めます。フォーム解析レッスンは、1時間2,160円(ゲーム代別・要予約)で、道玄坂店と新宿店に西尾プロが在店している時に受けることのできる人気のレッスン。21時からスタートしたこの日最後の一コマは、基本のストレートショットで、正面からのフォームチェックをしつつ、MVP2000 を使いながら受講者にわかりやすく、修正点やチェックポイントをレクチャーしていく定番のレッスン。ここ道玄坂店では、西尾プロの長年のインストラクター経験とビリヤードへの飽くなき探求心から培われた、科学的、論理的なレッスンが展開されていました。
次に伺ったのが、道玄坂店と同じ渋谷の『バネバグース渋谷宮益坂店』。オシャレな作りの店内でレッスンしていたのは、先頃同店を会場にして行われた『全日本女子プロツアー第2戦』でプロ初優勝を遂げた中島美秀プロ。その個人レッスンの現場にお邪魔しました。
『バネバグース渋谷宮益坂店』は、こちらも渋谷のド真ん中に位置していて、日頃は仲間とお酒や美味しい食事とともにカジュアルにビリヤードを楽しむお客様が多いオシャレなお店。ここで週2 回、やはり17時~22時までの時間帯でレッスンを行っているのが、バグースでのレッスンも8年目を迎えた中島美秀プロ。編集部が訪れたのは、ちょうど30分1,080 円(ゲーム代別)の個人レッスンの予約が入っている平日の17時で、受講者の加藤さんにも協力いただいてレッスンの模様も併せて取材させて頂きました。
中島プロも他のバグースインストラクターと同様に、在店時間は、無料ワンポイントレッスンと有料の個人レッスン、道具のメンテナンスチェックなどを行っていますが、まずはもう少し具体的に宮益坂店でのレッスンの状況を伺ってみました。
「もちろんプレイヤーの方もいらっしゃいますが、場所柄もあって、ビリヤードをアフター5 の一つの楽しみとしているお客様が中心で、そんな方達に積極的にお声がけしながら、ワンポイントレッスンだったり、大勢で楽しめるゲームを紹介したりすることも多いです」
誰もがビリヤードをもっと楽しめるように、お客様には積極的にアプローチしていくという中島プロのレッスンで中心になるのは、初級者層にできるだけ明快に基礎を教えていくこと。そのために女子プロならではのきめ細かい工夫もしています。
「まだビリヤードに馴染みのないお客様にレッスンする時には、まず専門用語は使いません。私達には当たり前でも、普通はわかりにくいですからね。それから受講の際に、その方のスポーツ経験を聞くことも多いかな。あとはカップルで来られるお客様だったりすると、とにかく女性が楽しめるようにレッスンしていきますね」
この日の受講生の加藤さんは「何度か遊びでやったことはあったけど、もっとカッコ良くビリヤードができるようになって、自分の秘技にしたい」と、1ヵ月ほど前から週1 回のペースで個人レッスンを受け始めて今回が4回目。この日は真っ直ぐに手球を撞いてクッションから真っ直ぐ戻してくる練習、短い真っ直ぐのショットで的球を入れる練習などを中島プロから細かくアドバイスをもらいながら進めていきました。もちろんこの時も中島プロはビリヤード用語はほとんど使わず、わかりやすく一般的な言葉で明確に身体の動きや狙い方のイメージをレッスンしていきます。
「特に初級者の方に理解していただくためには、インストラクターからのアウトプット、つまりわかりやすい言葉が必要です。バグースインストラクターは共通してこの部分に長けていると思います」
そして中島プロのレッスンは、最後にプロから加藤さんに今日のレッスンのおさらいメモが渡されて、あっという間の笑顔の絶えない30分は終了。加藤さんもまた一つ新しい感覚を発見したようで、レッスン後はすぐに1人練習に取り組んでいました。
「受講者の方がプレイヤーになって、試合で優勝したりというのも嬉しいですけど、やっぱりビリヤードを好きになってもらえることが一番です。お客様の笑顔を見ることが大好きですね。カップルが遊びにいらっしゃることも多いお店ですから、ビリヤードを知ってもらって、そんな方達のいつものデートコースにビリヤードが入るようになるのが今一番の目標です(笑)」
宮益坂店では、いつも笑顔で迎えてくれる中島プロからレッスンを受ける女性や初級者が増加中とのことです。
最後にお邪魔したのは、常に賑わいを見せる人気の街・吉祥寺の中心部に位置する『バグース吉祥寺店』。ここでは、現在ツアープロとしても活躍を続ける塙圭介プロのレッスンを拝見しました。
バグース吉祥寺店は、日頃から学生やビジネスマンが多く、常連プレイヤーの数も多いお店。取材に訪れたのは平日の17 時過ぎという早い時間だったにも関わらず、すでにたくさんの方達がプレーしています。ここで週2回、17 時~22 時までの時間でレッスンを行っているのが塙圭介プロです。
塙プロと言えばJPBA 公式戦3勝、国内オープン戦や東日本グランプリといったプロツアーでも常に上位で戦うトッププレイヤーの1 人。そんなバリバリのツアープロも、バグースインストラクターとしてすでに10 年のキャリアを持っています。
「在店の時間帯は、バグースインストラクターとして、無料ワンポイントレッスン、有料レッスンを中心に、お客様とコミュニケーションをとりながら店内を回っています」
レッスン開始早々、すでに仲間同士で相撞きをしていた常連プレイヤーの皆さんと楽しく会話を交わす塙プロ。そんな場面にお邪魔して、早速塙プロが日頃どのようなレッスンを行っているのかを聞いてみました。
「レッスンを受けて頂いたお客様の層は、今日初めてキューを握った方から上級者まで様々です。吉祥寺店は沢山の方に来て頂けているので、有料レッスンがたまたま入っていなくて無料ワンポイントレッスンだけの日だと、5 時間で15~20 人とお話をしながらレッスンすることもありますよ」
まず無料のワンポイントレッスンは、初心者層が多く、ブリッジの作り方から基礎的なフォームやストロークなどをやさしく教えていくことが多く、このコミュニケーションを通じて、もっとビリヤードをやってみたいという気持ちになってもらうことが、塙プロがレッスンする上での大きな喜びの一つだとのこと。また、有料のレッスンは中上級者の受講も多く、実際に塙プロとゲームを行う形式のレッスンも多いそうです。
「やはり実戦形式で一緒に撞きながらのレッスンを希望されるプレイヤーは多いですよ。この時は僕なりの視点から、お客さんのプレーでポイントとなった部分で、技術やメンタル面からのアドバイスを送っています」
様々に話していると、塙プロがレッスンで大切にしていることが浮かび上がってきました。「元々僕は感覚派のプレイヤーだったんですが、バグースでレッスンをするようになってから、基本的には誰にでもわかりやすく、理論も伴った形でレッスンするように努めています。ただしこの時、お客様が楽しくビリヤードをしたいのか、真剣に上手くなりたいのか、また感覚的に話すのか、しっかり理論から説明するのかなど、お客様を見て、話して、自分なりにこれが合うんじゃないかと判断してからレッスンをするようにしています。自分を信頼してレッスンを受けて頂いているお客様に、必ず『受けて良かった』と思う部分を持って帰って頂いて、よりビリヤードが好きになってもらいたいですから。そんな感じですから、自分自身もレッスンをするようになってから確実に成長しましたね(笑)」
そう言って爽やかな笑顔を見せる塙プロ。トッププロのレッスンは、シビアな舞台で磨き抜かれた技術と感覚、さらに受講者とのコミュニケーションを通じて、受講者一人ひとりに合わせたオンリーワンなレッスンなのでした。
現在バグースでレッスンを行っている10 名のインストラクターが、フォームのこと、ストロークのことはもちろん、アイテムやビリヤードのルールやゲームなど、ビリヤードに関する様々な質問に対して、明快に一発回答します。その第1 回目は初心者の誰もが思うこんな質問です。
正しくセットアップしたらブリッジと左足が最後まで動かないようにしましょう。そしてゆっくりでも良いので、肩からグリップまでのストロークの振り子を大きくしてショットするように心掛けて下さい。ブレイクは『速く』『強く』より、『大きく』『滑らかに』『正確に』です。
強いブレイクを打つコツはキューをゆっくり振って重い球を撞くイメージを持つことです。手だけが先に走るような状態にならないために、テイクバックの頂点で一拍待って、その間に体重移動をし始めてから最後にストロークが追い付く位のタイミングで撞ければベストです。
レッスン店舗: バグース 川崎店
タイミングを掴むため、まずは普段プレーするフォームのまま、ブレイクポイントからのハードショットを繰り返します。その時に必ず肘支点になるように心掛けてください。ハードショットを繰り返すうちに「ここで力が入る」というポイントに気が付くと思います。
レッスン店舗: バグース 新宿西口店
まずは強く割ることより厚みを正確に狙うことが大切です。始めの内はあまり体重移動を考えず、腕を速く振るイメージでいくのも良いでしょう。ブレイクは手球に回転を与えたくないショットなので、コンパクトなストロークでキュースピードを上げていきましょう。
レッスン店舗: バグース 各店
Hospitality & Entertainment をコンセプトに、ビリヤード、ダーツ、カラオケ、ネットカフェ、レストラン、シミュレーションゴルフなど様々なアミューズメントを幅広い層に向けて提供している人気のエンターテインメント空間。現在大都市圏を中心に、ビリヤードがプレーできる店舗を全国27ヵ所で展開中。(2017年3月31日現在)