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過去のニュース(2018年)

2018.11.19 トーナメント

秋の尼崎にさわやかな新風

第5回日本学生ナインボール選手権大会

11月18日(日)に兵庫県尼崎市の『アルカイックホール・オクト』において、『第5回日本学生ナインボール選手権大会』が開催された。ここに北は北海道、南は沖縄から、上は大学院生から下は小学生までの学生プレイヤー計44名が集結した。

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本日から開催される「全日本選手権」の会場でもある特設会場


昨年に続いて大学生と高校生が1部門、中学生と小学生が1部門の計2部門に分かれて競技が行われ、大学生・高校生の部はナインボール4先のダブルイリミネーション予選を経て16名が決勝シングルへ。中学生・小学生の部は3先のリーグ戦で行われて、4名が決勝シングルへ残って戦うフォーマットが採用された。

まず8名がエントリーした中学生・小学生の部では、昨年優勝の村松勇志(中学3年)がグループリーグで姿を消す波乱が起きた。「大学生と戦っても優勝が狙える」と囁かれるほどの実力者である村松だが、「年下の選手から勢いで圧倒される経験は初めてでした」と振り返ったように、数年前の自分を見るような景色であろう、小学生たちの伸び伸びとしたプレーに戸惑いもあった印象。しかし終了後は仲間の応援にまわって「明日からの選手権(ステージ1)で頑張ります」と気持ちを入れ替えた様子だった。

中学生・小学生の部でベスト4に進んだのは、枠順に金澤蒼生(兵庫)、鍵山太陽(奈良)、谷みいな(神奈川)、織田賢人(福岡)の4名。谷を除く3人は小学生で、テーブルの高さと比較しても身長が足りないように見える。だが球は爽快だ。スピーディーかつ迷いのないキュー出しで、 次々とボールを沈めていく。これには運営に携わるプロや応援にかけつけたプロを中心としたコーチ陣も感心しきりといった様子。そして準決勝はともにグループリーグ2位であった鍵山と織田が勝利を収めて決勝戦へと駒を進めた。

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中学生・小学生の部決勝は鍵山がワンポイント先行するが、ここから織田が好機を逃さず加点を重ね、3-1のスコアで優勝を決めた。父親の哲夫さんが「家族で遊びに行くのに久しぶりにやってみよう」と20代の頃にハマっていたビリヤードに賢人君を連れていったのが2年前。そして今、5年生になった賢人君とは、最近はハンディなしで勝ち負けを競う関係に。大きなタイトルは初めてだという賢人君は、「準決勝は緊張でダメでしたが、決勝戦では自分のビリヤードができてよかったです」と笑顔で一日を振り返った。

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左から3位タイ・金澤蒼生、優勝・織田賢人、準優勝・鍵山太陽、3位タイ・谷みいな


そして上記部門の表彰式が終わった頃には大学生・高校生の部もベスト16の回転に入っていた。こちらは大学生が中心の布陣で、そのレベルはBクラス上位からAクラス程度と見受けられる。ベスト4には枠順に新垣敦久(沖縄)、上手佑香(京都)、劉之渝(東京)、宮島亮介(石川)という面々が堂々の進出を果たした。ちなみに上手は昨年、中学生・小学生の部で準優勝を果たした高校一年生。男子大学生をなぎ倒す女子高生に自然と注目が集まる。

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大学生・高校生の部決勝・上手佑香(左)vs 劉之渝(右)


ここで上手が、この日接戦に強さを見せた新垣をヒルヒルの末に退けて、また劉は1回戦から3連続となる零封勝ちを決めて、それぞれ決勝戦進出を果たした。決勝では劉が先行して3-1と先にリーチをかける。だがワンミスから形勢は変わり上手が遂に追いついてフルゲームに。場内が固唾を飲んで見守った最終ラックは、4番のセーフティ戦を制した劉が、ここから5球をしっかり取り切って優勝を決めた。全関東学生選手権を2連覇中の劉は、中国上海出身で日本での滞在は4年目。中国ではスヌーカーをプレーしていて、来日を機にポケットを始めたのだという。圧巻のプレーに、来年は本大会での二連覇にも期待が寄せられる。

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優勝の劉之渝


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左から、3位タイ・宮島亮介、優勝・劉之渝、準優勝・上手佑香、3位タイ・新垣敦久


なお今大会の参加者にはBCJより発売中の『くまモングッズ』の詰め合わせが記念品として配布された。特に中小学生の活躍が目立った今大会。その8名のレベルは揃って想像以上に高い域にある。表彰式で保護者カメラマンがずらりと並ぶ姿は壮観で、これはジュニアスポーツでは定番のもの。親子で始めたビリヤードで、気が付けば子供が親を抜き去ろうとしているのも、他のスポーツと同様の事象。

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この爽やかに吹く新風がさらに広がって根付いていくために。友達もビリヤードに呼び込むために。業界のジュニア受け入れ態勢、指導要綱、各種整備を急ぐことも、子供プレイヤーの成長に後れを取ってはなるまい。

By Akira TAKATA