ブドウからビリヤードへ
山梨県で四ツ球を種目に活動している山梨大学撞球部。9月の第1週、部員達が長らく渇望していた中台(四ツ球用のビリヤードテーブル)が導入された。
四ツ球をしようにも山梨県内に中台は1つもない。ということで春に始動した撞球部の活動は、練習環境を整えるため、担い手不足のブドウ畑を引き継いでブドウを育て、その収益で環境を整備するところから始まった。(その時の記事はこちら)。
そして、巨峰の旬が終わりブドウ畑が落ち着いた9月上旬、遂に中台が撞球部に導入された。台が置かれたのは山梨大学構内だ。撞球部が大学と重ねた協議の中で、一つのスポーツとしてビリヤードに取り組んでいくという撞球部の姿勢と認識が台の設置に繋がった。山梨大学は国公立大学の中で初めて学内にビリヤード台を導入した大学となった。
「半年遅れではありますが、台の導入ができました。これでやっときちんとした撞球部の活動ができそうです」と田中部長。台の設置は半日がかりでニューアートのスタッフが全てやってくれたということで、その日の夕方からさっそく部員達が部専用の台の感触を楽しんだようだ。
「他都県への遠征以外では、今までカラオケボックスに併設されてるポケット台でしか練習してこなかったので初めてポケットのない中台で、しかも学内で撞けるというのがとても嬉しいです」とのこと。現在は夏休みで朝から晩までいつでも台を使うことができるので、部員達は思い思いの時間に来てプレーしている。
台が設置された日、楽しそうに球を撞く部員のみなさん
秋学期が始まった後は、使用が許可されているのは夕方から夜にかけてのみで、およそ20名いる部員で交代しながら撞く形となる。今回導入できたのは1台のみなので、毎日使えるとはいえ部員数を考えると活動環境は手狭だ。「この先何年か経つと部員も増えていくと思うので、どう対応するかは課題として残っています。大会で優勝するなど実績を作って撞球部が学内で活動する価値を大学に提供できれば、またもう1台、もう1台と増えていくのかなと思います。みんなに頑張ってもらわないとというところです。」
できたてほかほかの中台。ブランズウィック I か II でとても古いものらしい
課題は残るが、とにもかくにも一番の壁であった環境の確保ができたことは確かだ。9月の半ばには大阪遠征が決まっていて、撞球部の遠征を知った社会人グループの方々と試合をする予定だ。「『良かったら一緒に四ツ球の試合をしませんか』と、会を企画して頂きました。私達は初めて試合をすることになるので、上手く撞けるか不安もあります」と田中部長は初試合への緊張を滲ませる。
山田浩二著「初歩から二百まで たまつき圖解」から引用の撞球十訓
ちなみに、台の導入に大きく貢献した今年のブドウについて聞いてみたところ「ブドウは猛暑に苦しめられ、高温障害で多少色のノリが悪かったものの、粒の大きさと味に関してはすごく良い巨峰が出来ました」との感想が返ってきた。販売予約も予定数量に達し上々の出来だったようだ。ブドウ畑の今後については、「来年から本来の所有者が耕作可能になったため年末の返却が決定しました。担い手不足の中山間地の農地を荒すことなく次の耕作者に繋げることができこちらも目的を達成できたと思います。来年度の耕作については、困っている人が出てきたら行う予定です」とのことだ。
ブドウ畑で多くの時間を過ごしてきた撞球部。これからはキューを握ってビリヤードと向き合う時間だ。「応援の声も届くので、部員一同練習に励みたいと思います。これからどんどん頑張りたいです。」ブドウ畑から中台へ、活動を本来の場所へ移して撞球部は前進する。