2017 Men's 10-ball Final
数々の激闘が30年間に渡って繰り広げられてきたジャパンオープン。中でも記憶に残るドラマが数多く生み出されてきたJOのクライマックス、決勝戦のファイナルラックを映像と共に振り返る「THE FINAL RACK」をJOカウントダウンでお届けしている。今回は2017年男子決勝戦だ。
昨年の男子ジャパンオープンは10ボール、前年から1ラックダウンして8ラック先取で開催されていた。決勝は当時WPA世界ランキング1位の張榮麟とJPBAランキング1位、国際舞台でもその名を響かせる大井直幸の対戦となり、まさにワールドクラスの戦いが期待された。
張榮麟
大井直幸
ファーストラックは張がブレイクからあっさりとランアウトして先制した。その後第4ラックが終わるまでにカウントは張がリードの4?1に。第3ラックで張のブレイクノーインから大井がランアウトした以外は張が得点を重ねる展開となった。しかしこの前半、張はプレッシャーもあってか、あまり思い通りに撞けていないようだった。第2ラックでは小さなポジションミスが重なって6番ではポジションできずにセーフティを強いられていたし、第4ラックでは大井の1番セーフティに対して当てるもその後手球はスクラッチ。いつもは冷静沈着な張がキュー尻を強く床に叩き付けた局面もあった(実際にキュー尻は壊れた)。
しかし、次のラックでは冷静さを取り戻し、世界トップ渾身の1番セーフティを披露する。それに対し大井もまた素晴らしいショットで返し会場は大きく沸いた。このラックでは、張のセーフティが有効に決まって既出の通り4?1。第6ラックで張のセーフティミスから大井が1点返して2?4。
次のブレイクから一気に逆転に持って行きたい大井だったが、ブレイクの手球は蹴られてスクラッチ。形勢逆転はならず、またしても両者の得点差は開いてしまう。しかし、張もそのまま点数を重ねることはできなかった。5?3で迎えた第8ラックでは7番でまさかのシュートミスを犯し、大井がまた1点返す。だが、第9ラックの大井のブレイクはノーイン。張がセーフティ戦を優位に運び、第10ラックでも得点して7?3でリーチを迎えた......。
ショットの精度、力加減、プランニングどれをとっても完璧、ワールドクラスの張が、若干ではあるが珍しく崩れていたこの決勝戦。しかし、セーフティを巧みに挟んで勝利を引き寄せた強さ、スマートさはやはり世界トップクラスならではだろう。
最終ラックではレフェリーが手球を拭く際にマーカーをし忘れる場面もあったがそれに対しても笑顔で対応していた張。表情を一切持たず、黙々とプレーする精密マシンのようだが、試合以外では爽やかなナイスガイとして評判だ。今年は残念ながらジャパン・オープンにはエントリーしていないので、次に国内の試合で観ることができるのは11月の全日本選手権か。