2006年大会、ニューピアホール特設会場に登場した奥村健
前回は、JOの歴史の中で伝説の一つとなっている、決勝戦での7連続マスワリをご覧いただきましたが、今回はプレーそのものではないものの、これもまた深く印象に残っているシーンの一つを紹介してみましょう。
下で紹介している動画は、2006年の『第19回ジャパンオープン男子ナインボール』ベスト16戦、奥村健vsフランシスコ・ブスタマンテの第10ラック?第12ラック。競技種目はナインボールで、9ラック先取、勝者ブレイクというフォーマットです。
ベスト16戦で奥村と対戦した、フィリピンが誇るフランシスコ・ブスタマンテ
この大会の前年、2005年に自身7度目の全日本選手権優勝を遂げている奥村(現JPBF)とワールドトップスターの1人、フィリピンのブスタマンテというベスト16戦にはもったいないくらいの好カードとなったこの試合。まずはブスタマンテのブレイクスクラッチから奥村が軽快にランアウトを果たし、次ラックのマスワリで2-0と先行。
奥村の4-1リードで迎えた第5ラックの奥村の一つのシュートミスから挽回を図り、3-4まで追い上げたブスタマンテでしたが、攻めも守りもほぼ完璧なプレーの奥村に、この後はラックを奪えないまま真綿で首を締められるかのように追い込まれ、スコアは奥村の6-3となります......。
ブスタマンテの力を持ってすれば、3-8からの逆転も十分に可能だったはず。しかしこの試合ではレジェンドを前に、ラストショットのスクラッチで完全に心が折れてしまいました。それはなぜだったのでしょう。
実は日本ではあまり対戦がない奥村とブスタマンテですが、奥村が準優勝を果たした1999年のUSオープンでの2連勝を始めとして、この時までの海外の大舞台での対戦成績では奥村が大きく勝ち越していたのです。ブスタマンテは奥村健というプレイヤーの力を苦い敗戦という形で嫌という程知っていました。そして、レジェンドへの尊敬の念とともに、日本人プレイヤーで最も対戦したくない相手として、苦手意識も植え付けられていたのです。