『第50回全日本選手権大会』女子ナインボールは21日から
今年初めてナインボール世界女王となった陳思明
陳思明という中国の女子選手をご存知だろうか?
今年の全日本選手権女子ナインボール、既報の通り中国のツートップ(陳思明=チェン・シミン、韓雨=ハン・ユー)の2人が最有力の存在だが、中でも陳は今、世界中を見渡しても敵なし。天下無双の域にある。今大会の観戦に行くか否かを迷っている人がいるなら、陳を見るだけで価値があるだろう。それほどに群を抜く強さを持つのが今年の陳思明だ。
その陳の強さを説明する前に、全日本選手権の舞台において日本の女子は、『全日本』という大会に国内のプロとして矜持を抱き、結果を残し続けていることを伝えなければならない。過去の全28回開催を振り返ってみても、表彰台に日本勢が立たなかったのは3回('01、'06、'09)のみ。男子のようにWPAのポイント対象ではないため海外トップクラスの参加人数は限られるが、台湾、中国、韓国の一線級が訪れる中での奮闘が見てとれる数字だ。
梶谷景美は全日本選手権優勝4回の記録を持つ
また個人別に表彰台に立った回数を数えると、
梶谷景美の9回を筆頭に、
高木まき子と
河原千尋の6回。日本の女王達がいかにこの大舞台で自身のポテンシャルを引き出してきたのかが窺える数字だ。もちろん、プロ活動年数を差し引くと、改めて河原の強さを知ることができる。2005年にプロデビューを果たした河原が、12年のキャリアの中でその半分に当たる回数、全日本の表彰台に立っている。いかに素晴らしい数字であるかは説明不要だろう。
全日本でコンスタントに活躍する河原と高木(写真左から)
またさかのぼって
光岡純子、
夕川景子の準優勝という戦績も、結果にこそ本人達は「あと一歩」の悔しさを抱いただろうが、十分に日本人選手のポテンシャルを披露してくれた。
木村真紀が3度表彰台に上がったことも忘れてはならない。とにかく「女性は強い」。そう思わせるだけの戦いを重ねて結果を残している。昨日も書いたが、次号の誌面で紹介する'05〜'12の選手権データ。表彰台に立った数では、日本勢は台湾勢と同数の首位タイを示していた。
夕川(左)は2010年、光岡は2011年に準優勝を経験
このような日本人女子の逞しさを踏まえた上で、改めて陳思明の話に戻させていただく。彼女の強さを言葉で表すのは難しく、もはやそれは神の領域。運勢や展開が勝敗に少なからず影響を及ぼすナインボールという競技において、それも世界各国のトップが集う中、これほどの数字を叩き出した選手は見たことがない。
※参考:陳思明2017年のメジャー大会戦績
アムウェイオープン・優勝
チャイナオープン・優勝
ワールドゲームズ・優勝
グリ国際ナインボール選手権・5位タイ
女子ナインボール世界選手権・優勝
予選を含めた上記5大会の全対戦成績は28勝1敗。勝率9割6分6厘。
日本人選手が陳を破ったならば、報奨金を用意してよいのではないか。さらにCUE'Sとしてはそんなドラマティックなヒロインを表紙に起用すべきではないか(これはぜひ採用していただきたい)。
会場となる『アルカイックホール・オクト』
参考までに、今大会に出場する選手で上記大会の勝率で陳に次ぐのは韓雨の7割1分4厘(15勝6敗)。ちなみに陳に世界でただ1人土をつけたプレイヤーは、今大会も参戦する魏子茜(台湾)だ。
女子の部は11月21日(火)に始まる。アルカイックホールでも陳は神の領域を披露するのか? それとも人の子に姿を変えるのか? 史上最強の女を見逃す手はない。
ビリヤードネットTV『
CBNT』では、2005年から2016年までの各ファイナルを含む全日本選手権の202試合を観ることができます。合わせて、ご堪能下さい!
Akira TAKATA