左:名人位・小川徳郎(KPBA)、右:挑戦者・林武志(KPBA)
挑戦者は神奈川アマチュアポケットビリヤード連盟(KPBA)所属の16歳、林武志。それを迎え撃つのは同じKPBA所属の先輩である小川徳郎。この名人位決定戦は前期名人の本拠地にて行われるので、通常だと他地域からやってきた挑戦者の応援団も集まるという風景が見られる。しかし今回のギャラリーはKPBAの連盟員らが中心となっており、誰もがじっと両者の戦いを見守り、声援を送るような、そんな雰囲気で決定戦は午前11時にスタートした。
林は攻守柔軟なプレーを見せて第1セットを奪った。一方の小川は2度目の防衛戦のプレッシャーからなのか、ミスの目立つらしくないショットを繰り返す。しかし、その状態の中でもなんとかこなしていき、第2セットでは序盤からリードを奪って、なんとか1セット目を獲得した。
ポケットがタイトなテーブルであることや、2人の対戦をぐるりと大勢のギャラリーが囲む独特の雰囲気、そしてタイトルへの重圧が影響しているのだろうか、互いに決して本調子とは言えない様子で試合が進んでいく。
その後は第3セットを獲った林が一歩前に出ると、その次は小川もという具合で一進一退の試合展開となったが、このあたりから小川が少しずつ復調を見せてきた。時折ミスも出るが、着実に勝負どころを取っていき、さらに2セットを連取でセットカウントは4-2。防衛に王手をかける。
スタートから8時間ほどを経て迎えた第7セットは林が先行していく。巧みに配置をこなしていき、288-163のスコアでの14番、このセットのゲームボールに至ったがこのシュートがサイドポケットに嫌われてしまう。そして小川はその隙を逃さずに得点を返していく。最後には林とのセーフティの攻防の末に得点を重ね、最後は300-288として試合を決めた。これで2度目の防衛、3期目の在位となる。
「1日通してダメでしたね。途中、自分なりにグリップの位置を変えたり修正も試みたんですけど。苦しい中でもどうにかして勝てればと思いやっていきました」
この調子の悪さの中でも、時にはショットクロックの中でしっかりと時間を使い慎重に、時には一際の集中を見せつつのプレーだった。
最後はギャラリー全員でさらなる未来の可能性も秘める2人のプレイヤーの戦いを讃えた。林の戦いぶりも堂々たるもので、もはやジュニアの枠には全く収まらないプレイヤーとなったことも示しただろう。
未来ある2人のプレイヤーが、今後も長きに渡りビリヤード界を牽引していく大きな力となっていくという予感を抱かせる、熱い名人位決定戦の1日となった。
Masato Kitamura