西日本グランプリ第5戦
北谷はプロ通算8勝目
大井直幸の2日連続優勝を止めたのは、同世代の大井に苦汁を飲ませ続けられてきた杉原匡だった。23日に続いて大阪の『マグ・スミノエ』で開催された『西日本グランプリ第5戦』。前戦優勝シードで登場した大井の隣を引き当てたのが杉原だった。実は前日の再戦で、同シリーズにおいて杉原は大井に6連敗中。前日から大井が本調子でないとはいえ、最難敵に変わりはなく、抽選直後に杉原は苦い笑みを浮かべていた。
会場となった『マグ・スミノエ』
今年、公式戦で大井に勝った日本人プロはわずかに4人。その内、今大会に出場しているのは
川端聡、
竹中寛、
飯間智也の3名。グランプリに限れば竹中以外はまだ誰も勝っていない。シーズンも終盤に差し掛かるこの時期に、ここまで追随を許していないとは。大井の強さはやはり別次元にあると捉えるのが賢明だろう。
そして、この日は杉原が気を吐いた。交互ブレイクでは自身のブレイク番のゲームを取れば互角に戦える。このような机上論を許さないのがビリヤードだが、杉原が6-5と先にリーチをかけた第12ラックで大井がブレイクスクラッチを喫して、残りを慎重に取り切った杉原がひとつ借りを返した。その杉原は次戦で
原口俊行を下して準決勝へ進むが、ここでは
北谷好宏が爆発して圧勝を収めた。こうしてみると西日本も層が厚い。
3位タイ・杉原匡
反対の山にもドラマが多く生まれた。まず
河原千尋のトレーナーとして知られる
湯山功が自身初となる予選通過を果たし、さらにベスト16では前日に続いて本戦に残ったスーパー高校生・田中汰樹を圧倒して、展開するビリヤード論を自身の成果で裏付けた。その湯山を止めたのは飯間智也。飯間はベスト16でも竹中寛との激闘を最後は大勢のギャラリーを唸らせるランナウトで締めてきた。その飯間は続く準決勝で東海グランプリでも3位入所を果たして注目を集める福岡の
能勢勇作と対戦。ここではキャリアの差を見せる形で7-3で北谷の待つファイナルへ。なお「1つ気付いたとを実践している」という能勢の今後にも要注目だ。
湯山功が今年初の5位タイに入賞
そしてファイナル。バンキングを制したのは飯間だったが、ファーストラックを自らのポジションミスから選択したセーフティを北谷が縦バンクで返して先行。だが安定感光る飯間は逆転に成功して4-2のスコアで中盤へ。だが次ラックから風向きは大きく変わる。両者が攻めあぐねた第7ラックを取った北谷が流れを引き戻すと、冴え渡るブレイクも活かしてを主導する。
3位タイ・能勢勇作
パワフルにして繊細。そんな北谷は掴んだ流れを離さず、結果5連取を決め7-4のスコアで約1年ぶりとなる優勝を決めた。その直後に大井が歩み寄って祝福のハイタッチ。「しばらく結果が出ていなかったので本当に嬉しい。今までで一番嬉しいかもしれない」とコメントしながら北谷が浮かべた安堵の笑みが印象的だった。北谷はこれでプロ公式戦通算8勝。思い返せば秋の主役に何度も躍り出てきた北谷。今年もシーズン到来か。
準優勝・飯間智也
こうして最強の男・大井のホームで開催された西GP2連戦は幕を下ろした。大井をサポートする株式会社スワッグスポーツは次の最終戦(10月29日に京都で開催予定)まで大会スポンサーを務める。改めて見どころは「大井か否か」。世界獲りに最も近い男が、西日本で主役の座を明け渡す姿は想像がまだできない。
※ファイナルの様子は後日
CBNTで放送予定です。どうぞお楽しみに!
Akira TAKATA