WEB CUE'Sトップ > 過去のニュース(2017年) > 【JO特集 Vol.15】Play back 2014

過去のニュース(2017年)

2017.07.04 トピックス

【JO特集 Vol.15】Play back 2014

「ロケット」襲来!! 女子は18歳が制覇


土方隼斗が10年ぶりに日本人優勝を果たし、ニューピアホールが歓喜に沸いた2013年。その翌年、高速で飛んで行くUSA式ロケットが日本に飛来した。そしてそのロケットを受け止めたスーパーマンがフィリピンの不死鳥、アントニオ・リニングだ。

jo2014_2_th.jpg

アントニオ・リニング


2014年はJPBA男子プロに期待がかけられていた。2013年に土方が10年間の呪いを解いたこともあったし、決勝日にはJPBA勢13人が残っており、海外勢を迎え撃つ準備は十分に整っていたからだ。

jo2014_1.jpg

男子決勝日トーナメント表


決勝日のベスト16に残っていた3人の海外選手は、日本のメジャータイトルを総なめにしているフィリピンのアントニオ・リニング、同じくフィリピンから来た、リー・ヴァン・コルテッザ、そしてアメリカからやって来た「ロケット」ことロドニー・モリスだ。

jo2014_4_th.jpg

「ロケット」ロドニー・モリス


jo2014_3_th.jpg

リー・ヴァン・コルテッザ


その3人はみなワールドクラスの実力を持っていた。青木亮二がベスト8でリー・ヴァン・コルテッザを倒し、ベスト16でコルテッザに敗れていた栗林達の仇を討ったものの、リニングが羅立文塙圭介を、モリスが大井直幸田中雅明を倒しベスト4へ進出。JPBAのトップ勢が軒並み海外選手の進撃を許していた。

jo2014_5_th.jpg

青木がコルテッザを破りベスト4へ


ベスト4の対戦の1つは「ロドニー・モリスvs青木亮二」。モリスはロケットという二つ名の通り、ハイテンポな取り切りで青木を圧倒して9-3のスコアで決勝戦へ進んだ。敗れた青木は前戦のvsコルテッザで「体力と集中力を使い果たして」しまったようで、単純なシュートミスが目立った。

jo2104_aoki.jpg


もう一方のベスト4が「アントニオ・リニングvs早瀬優治」。この二人の対戦は早瀬優治が4-0までリードを広げて幸先の良いスタートを切る。しかし早瀬の1ミスからリニングが怒濤の逆転劇を展開。試合は5-9でリニングの勝利となった。

jo2014_7_th.jpg

早瀬優治


そうして決勝戦に残ったのは、リニングとモリス。「フィリピンvsアメリカ」という近年のジャパンオープンではあまり見ることのない、新鮮なカードになった。1ラック目、リニングが10番に手球を近付けすぎてしまい一見シュートがない状態にするミスを犯す。しかし、そこから鮮やかに縦バンクを決め、戦いのレベルの高さを観客に誇示した上で、試合の幕が開いた。

その後も互いのワールドクラスの攻撃力でナイスショットを連発するインファイトな面がある一方で、相手に攻める隙を与えないセーフティ戦が続くこともあり、その様子は2人が世界を戦い抜いて来た中で培ったクレバーな戦略と、経験を感じさせるものだった。

セーフティ戦を、リニングが空クッションの技術の高さを駆使してことごとく制し、モリスに反撃の機会を与えずに6-1で試合を優位に進める。後半にモリスが8-5まで差を縮めて反撃ムードを漂わせるが、最後はやはりリニングのセーフティの前にフリーボールを献上。それを取り切ったリニングが51歳で2度目のジャパンオープン優勝を果たした。

jo2014_8_th.jpg


jo2106_mb4.jpg

男子ベスト4。左から3位タイ・青木亮二、準優勝・モリス、優勝・リニング、3位タイ・早瀬優治


女子の部ではニュースターが誕生した。当時18歳の台湾人、呉芷婷だ。呉は前年の『北陸オープン』に弱冠17歳で優勝したことでも話題になっていた。ベスト8で同じ台湾の李佩容を8-2で倒すと、準決勝ではアマチュアながらここまで勝ち進んで来た和泉早衣子(現・プロ)と対戦。試合は序盤の呉のリードを、和泉が取り返して行く展開。6-7まで詰め寄っていた和泉だったが、第14ラックでまさかの8番シュートミス。呉が運を味方して決勝戦に進んだ。

jo2104_wu.jpg

呉芷婷


jo2014_11_th.jpg

和泉早衣子


決勝戦の相手は、過去にジャパンオープンの決勝戦を撞いたことがある李佳。圧倒的に経験がある李を相手に、呉は全く物怖じのせず連マススタート。その後も着実にリードを重ね、5-0まで走る。とても18歳とは思えないような風格のある試合運びで、そのまま李に反撃を許さず、8-2というスコアでジャパンオープンを初制覇した。呉はその後も、ジャパンオープンと『全日本選手権』に出場するために、毎年来日している。

jo2014_12_th.jpg


jo2106_wb4.jpg

女子ベスト4。左から3位タイ・夕川景子、優勝・呉、準優勝・李佳、3位タイ・和泉早衣子


JPBA男子は青木亮二と早瀬優治の3位タイが最高位、女子も夕川景子と和泉早衣子の3位タイが最高となった。決勝進出することはなかったものの、3位タイの男女4名が全員日本人になったことは、前年の土方の優勝の勢いを保ったという意味で、日本にとっては収穫だった。事実、翌年の2015年、そして2016年には日本勢が再び決勝戦の舞台で活躍している。この年は新たに到来しつつあるジャパンオープンの黄金時代に弾みを付けるような大会となった。

※記事で紹介されている「ロドニー・モリスvs大井直幸」、「ロドニー・モリスvs青木亮二」、「アントニオ・リニングvs早瀬優治」、「アントニオ・リニングvsロドニー・モリス」、「呉芷婷vs和泉早衣子」、「呉芷婷vs李佳」の試合はCBNTでご視聴いただけます。ぜひご利用下さい!