2016年のワールドプールシーン
2016年も残すところ1週間、今年も日本、そして海外のビリヤードシーンで数多くのプレイヤーが活躍し、様々なドラマが生まれた。今日から6回に渡って、そんな2016年シーズンを振り返っていく。まずは積極的に世界に挑んだJPBAプレイヤー達の足跡を中心に、新星登場、悲願の初優勝など話題の多かった世界のプールシーンにスポットを当ててみたい。
今年、JPBA勢の中でもっとも世界で力を発揮したのは、やはり河原千尋だろう。未だ記憶に新しい今月開催の『女子ナインボール世界選手権』で初の決勝進出。優勝こそならなかったものの、昨年大会の4位からまた一つ順位を上げて準優勝。最新のWPA女子ランキングでも、6位に順位をアップさせた。
河原はアムウェイカップでも自己最高の3位タイでフィニッシュ
2016年に河原が挑んだWPAランキング対象の国際トーナメントは3位タイだった『アムウェイカップ』、9位タイの『チャイナオープン』、そして『女子ナインボール世界選手権』の3試合。いずれもベスト16以内に入る安定した強さを見せたことで、日本のエースとしてさらに世界での存在感を増した。国内でも4年連続MVPを獲得した河原の2017年にはいよいよ世界獲りの期待がかかる。
2016年JPBA男子のトップ3は、
土方隼斗、
羅立文、
大井直幸。1月の『チャイニーズエイトボールマスターズ』を皮切りに、例年にも増して海外遠征を増やした大井、国内での圧倒的な成績を自信に海を渡った土方、それぞれに海外トップ勢と堂々渡り合ったが、優勝という実績を残したのは羅であった。
2016年、大井直幸はJPBA勢の中で最も多く海外戦に出場
今年のJPBA男子ランキングは土方に続く2位ながら、国内では勝利のなかった羅だが、まず8月に行われた『アジア選手権』決勝で、現在のWPA男子ランキング1位、台湾の
柯秉逸を下して大会連覇を達成。ちなみに同時開催の『アジア選手権・ジュニアの部』では田中汰樹も優勝を果たした。さらに羅は、9月の『World Tournament of 14.1』では、優勝した
ミカ・イモネン(フィンランド)に敗れたものの3位タイでフィニッシュする活躍を見せた。
アジア選手権で連覇を果たした羅立文(右)と田中汰樹
この2試合はいずれもWPAランキング対象ではないが、出場メンバーはともに世界選手権レベル。羅の正確無比なテクニックと勝負強さが、いずれもワールドクラスであることを証明するトーナメントであったことに間違いはないだろう。
World Tournament of 14.1でダレン・アプルトンとツーショット。羅の14-1はアメリカでも話題となった(写真/羅立文)
こうしたトップランカーだけでなく、高みを目指す志を持つJPBA勢の海外挑戦は年々増加の傾向にあり、この流れが確実に国内のレベルを引き上げている。来る2017年、今年にも増したJPBA勢の世界での活躍を期待したい。
世界のプールシーンに目を向けてみると、今年開催された世界選手権は男女ナインボールのみと、やや寂しいシーズンとなった。男子ではオーストリアのアルビン・オーシャンがアメリカのエース、
シェーン・バン・ボーニングを下して初優勝を果たし、女子は地元の
韓雨が自身2度目の女王の座に就いた。
オーシャンが初の世界タイトルを奪取(Photo Courtesy of Qatar Billiards & Snooker Federation/Bo Bader)
その他最も印象的であったのは、フィリピンのチェスカ・センテノの衝撃的な世界デビューだろう。一昨年の『ジュニアナインボール世界選手権』女子の部で優勝を果たしたセンテノは、今年6月の『アムウェイカップ』でテンポ抜群の攻撃的ビリヤードを武器に快進撃を見せ、決勝で
ケリー・フィッシャーを下して初のメジャータイトルを獲得。一気に女子のトップ戦線に名乗りをあげた。センテノのWPAランキングは現在、河原に次ぐ7位。来年以降も目が離せない存在だ。
衝撃的なプレーで世界デビューを果たしたチェスカ・センテノ
2017年のWPAカレンダーを見てみると、1月に新たな『WORLD 8-BALL SERIES』の第1戦が予定されている他、9月には男女の『エイトボール世界選手権』さらには『ワールドゲームズ』『ユニバーシアード』といった国際競技大会も組み込まれている。日本勢の戦いはもちろんこと、これらのトーナメントが繰り広げられる世界のプールシーンで生まれる新たなスター、そしてドラマにも注目していきたい。