第49回全日本選手権に向けて
今シーズン圧倒的な力を見せている土方隼斗
先に行われた『第30回北陸オープン』は、既報の通り男子は土方隼斗が、女子は台湾の新鋭・王婉菱がそれぞれ初優勝を飾って、記念大会は幕を下ろした。今日はそこで示された勢力図や記録を見ながら、全日本選手権の見どころを探ってみたい。
まず男子の決勝戦、土方隼斗vs栗林達は、まさにワンツーフィニッシュと呼ぶにふさわしい好カードであった。栗林は北陸のファイナル進出は2年連続の計4度目で、優勝こそないものの、その実力がいかに高いかを如実に示す。一方、土方は今年すでに公式戦7勝目で、ビリヤードという運勢などの要素も絡む競技性を考えると、まさに「神ってる」状況だ。いや、今年の勝率は神の領域。
栗林達は惜しくも北陸初制覇ならず
そして忘れてならないのが、高橋邦彦と並ぶ北陸5度の最多優勝タイ記録を持ち、今年は史上初の大会3連覇が懸っていた
大井直幸。北陸参戦をあきらめ『USオープン』に挑戦して、勝者側で
張榮麟、敗者側で柯秉中(ともに台湾)に敗れて終了となったものの、初戦から4戦連続の圧勝劇や、150名近い参加者の中で17位タイにつけたことは、満足のいく結果ではなくとも存在感を示したと言える。
ここに北陸では振るわなかったが昨年の選手権ではJPBA最後の砦として存在感を示した実力派・
羅立文。そして
川端聡、
田中雅明、
竹中寛、
北谷好宏、
赤狩山幸男らのキャリアを有するグループがチーム日本を支えつつ自らも海外勢を迎え撃っての頂点を狙っている。さらに
塙圭介、
早瀬優治、
吉岡正登といった面々も近年のアベレージが安定感を示していて期待が寄せられる状況だ。
一方、女子を見てみると、北陸決勝日8人の中に台湾勢が4人。それも最年長が優勝した王の19歳で4人の平均年齢は17.5歳と、台湾の新勢力台頭を讃えると同時に、経験値の高さで壁とならなければチーム日本としては、選手権に赤信号が点滅しているという危機感を覚えるところ。北陸では台湾若手のワンツーフィニッシュとなったが、選手権にはさらに格上の先輩グループも来日することだろう。そして他の国からも。
北陸でも存在感を見せた河原千尋
と厳しい状況予想を先に記したが、この北陸で3位入賞を果たした
河原千尋は、準決勝でもエースの貫録を存分に見せる追い上げも披露し、現役選手として北陸入賞回数も5に伸ばして単独2位に踊り出た。国内リーグを牽引する河原は、着実に昨年よりパワーアップを果たしている。北陸で力を出し切れなかったものの、
梶谷景美、
夕川景子、
曽根恭子、
高木まき子らのアベレージは高いところでキープされていて選手権に期待が寄せられる。また5位タイに入った
野内麻聖美と
光岡純子は揃って復調気配で上向きであることは間違いない。
驚異となった台湾若手勢
さらに今シーズン、戦績を伸ばしている
栗林美幸、
藤田知枝、
藤井寛美、
青木絵美らは、それぞれ過去最高の状態で選手権に臨むことは間違いない。そこに大型新人・
平口結貴らも強力な戦力となることだろう。
復調気配の野内麻聖美
国内最大のトーナメントは、JPBA所属の各選手にとって最大の目標であると同時に、チーム日本としてはタイトル奪取・奪還が悲願となっている。海外から来襲するプレイヤーたちの多くがタイトルを獲りに来ている現状を踏まえると、勢力図として劣勢であることは否めない。だが、男女とも日の丸を背負て戦う覚悟を決めたプロが一定数存在し、地道に準備を重ねている。
さかのぼれば全日本選手権に女子の部が創設されたのが1988年。男女揃って日本人選手が優勝したのは、1992年の
利川章雲と梶谷景美が優勝して以来。それほど難しく、それほどに価値は高い。
Akira TAKATA