『第5回BAATAオープン』and more
MAX・ハマチ、両部門の決勝ラウンド進出者全員(32名)で記念撮影
ご覧になった方も多いと思うが、今年の本誌1月号で、筆者は"沖縄企画"を担当させていただいた。昨年11月に開催された『BAATA OPEN』(バータオープン)を取材したり、初の沖縄Vとなった『2014都道府県対抗』の出場メンバーのお店を訪ねながら、独自のビリヤード文化の源流や名手輩出の土壌を探ったつもりだ。それから約1年、今年もまた沖縄を訪れることになったので、いくつかのトピックスをお届けしたい。
MAX・ハマチ、両部門のファイナル風景
主目的は、今年で5回目となる『BAATA OPEN』。本イベントは那覇市に2店舗を展開するビリヤード場『BAATA』のハウストーナメントという括りになるが、プレー環境は完全に国際標準にある。試合で使うテーブルは11台全て競技台の花型、ブランズウィック5で、ラシャは張り替えたばかり。そこで、存分にロングゲームを楽しめるのが人気の一因である。
MAX部門優勝の浦岡隆志
今年は昨年よりもさらに早く出場枠が埋まり、予選の予選まで開催されていた。県外からの参加者も年々増えている。A~プロ対象の『MAX』部門は47名が参戦。初出場の佐原弘子・女流球聖(千葉)や
有田秀彰(JPBA・東京)らの名前も見える。もちろん県内の強豪もズラリと揃っており、都道府県対抗優勝メンバー5名も全員決勝ラウンドに進んでいた。その中で優勝を果たしたのは、神奈川より初参戦の
浦岡隆志(JPBA)だった。浦岡はファイナルで唯一の沖縄在住プロ、
翁長良行と対戦。これぞプロというハイレベルな戦いを制して、最後まで観戦していた沖縄のギャラリーに深々と頭を下げた。
ハマチ部門優勝の大城武三選手
また、48名が参加したBCL対象の『ハマチ』部門は、開催店、BAATA所属の大城武三選手が平田卓選手(ビースト)との「本命格対決」を制してタイトル奪取。以前から決意していたというAクラス入りに自らの手で花を添えた。
ハマチ部門2位の平田卓選手
そんなBAATA OPENの翌日には、昨年は訪問できなかった沖縄南部・糸満市の名門ビリヤード場、『SEA PORT』を訪ねた。ビリヤードテーブル「9台」は県内3番目の規模。お客さんはほとんど地元の人だというが、沖縄は他県と比べてもプレイヤーの行き来が盛んで、ハウストーナメントや月例会などを介して常に交流が行われている。競技派プレイヤーにとってSEA PORTは、南部の重要拠点と言っていいだろう。
シーポート外観
こちらのオーナー、冨里正史氏は、沖縄県ビリヤード協会の副会長でもあり、若いプレイヤー達の良き相談相手でもある様子。続々と来店する学生プレイヤー達を暖かく見守りながら、「うちは学生だけでなく、50代~60代の方も結構おられます。ご覧のように台間もゆったりしていますので、好きな仲間と好きなようにビリヤードを楽しんでくれています」と語る。その台間同様、以前訪れたどのお店よりも、ゆったりとした時間が流れているように感じた。
シーポートで遊ぶ学生たち
そして、ビリヤード場密度の高い沖縄県に、この11月、また一つ新しいお店が生まれようとしている。それが、那覇空港に近い小禄(おろく)地区に誕生する『SOUTH』(サウス)だ。オーナーの浜田宗一郎氏は、神奈川県川崎市の『MECCA』で4年間、沖縄の大先輩である
銘苅朝樹(JPBA)の薫陶を受けた経歴を持ち、アマ選手としても『神奈川県知事杯』タイトルを獲得するなど高い実力を有している。昨年沖縄に戻って来てからは、『BAATA』で勤務しながら出店準備を進めてきた。
浜田選手の店、SOUTHの内部
「他県と比べると若い選手が多い沖縄ですが、大志を抱いて県外に出て行く若手は減少の一途。ですので、自分のお店からプロ志望の有力な選手を多く輩出できたらと思っています。多少なりとも県外の世界を観てきた経験を活かして、経営と育成、ともに励みたいです」(浜田さん)。
浜田宗一郎選手
今年も筆者は、早い時間からビリヤードに興ずる学生グループをどのお店でも目にした。また、競技派プレイヤーの平均年齢も、他県とは10は違うだろう。皆一様にオフェンス力が高く、プレーリズムが良い。一言で言えば「若くて強い」。それが沖縄ビリヤードだ。しかし、県外に未来を求めて出て行った経験を持つ選手となると、現在30歳の浜田氏を最後に絶えて久しいという。今も活況に見える沖縄のビリヤードシーンも、その内側では少しずつ変化が起きている。筆者は今後もこの"撞球の島"を訪れるつもりだ。
Billiards Days