「アメリカ1・台湾2・中国1」。世界選手権の7日目のアリーナに足を踏み入れることを許されたのは、各国を代表する4名の若きスター選手達。大会最終日はセミ・ファイナルの2カードから始まった。
が、台湾の20歳、柯秉中と対戦。この2人、昨年のアメリカで行われたエイトボールのインビテーショナルマッチのファイナルで対戦し、そこでは柯が勝っている。しかし、今回は完全にボーニングの一人舞台。柯としては、序盤の1番セーフティミス2回とブレイクスクラッチが痛かったか。今大会では珍しいブレイクエースもボーニングに出て10-1でリーチ。最後は柯の1番空クッションセーフティのミスから取り切って、あっさりとファイナル行きを決めた(11-1)。
(台湾)vs呉珈慶(中国)というアジアトップ対決が行われた。この2人は同じ高校の同級生。10年前、16歳で世界チャンピオンになり、その後、台湾から中国に移籍した呉。呉がいなくなった台湾撞球界でエースに成長した柯。互いの手の内を知り尽くした2人の対決は、互角の展開となり、ヒルヒルへともつれ込む。試合開始からの20ゲームで純粋なシュートミスは柯の1回だけ。これが今大会のベストバウトだろう。最後はバンキングを取っていた柯がマスワリで勝負を決めた(11-10)。
ファイナルは頂上決戦に相応しい最高のカードとなった
USオープン4勝、マスターズ優勝......しかし、まだ世界選手権は獲れていないボーニングと、今年のテンボール世界選手権(フィリピン)で優勝し、ドーハで2つ目の世界選手権タイトルを狙う柯。実績・知名度・実力......全て申し分のない本命格の2人によるファイナルは、オープニングゲームでの濃密なセーフティバトルから始まった。
そして、序盤、中盤と競り合ったまま推移していく。この2人にしてはポジションミスやシュートミスが目立っていたのは、さすがに重圧がかかっていたためだろう。微妙なタッチ感が合っていないのが見て取れる。それでも大崩れはしないのが世界トップの証。終盤はランアウトの応酬で、10-10、11-10、11-11......と一進一退の攻防を繰り広げ、最後は柯がマスワリでリーチをかけた後、ボーニングの2番ヒッカケがオープンになったところから柯が取り切り、見事にチャンピオンシップボールをコーナーに沈めた。
優勝・柯秉逸(台湾)。高い総合力で見事に世界2冠を達成
こうしてドーハで7日間に渡って行われた今年の男子ナインボール世界選手権は、柯秉逸の初優勝で幕を閉じた。台湾人のナインボール世界チャンピオンは、2005年の呉珈慶(現在は中国籍)以来。世界二冠達成者は、ロニー・アルカノ(2006年・2007年のエイトボール&ナインボール)以来となる。全てがハイアベレージで弱点らしい弱点も見当たらない26歳の新王者、柯秉逸。今後もその経歴に様々なタイトルを刻んでいくことだろう。