2015男子ナインボール世界選手権・グループラウンド終了
敗者側からベスト64入りを果たした栗林達
冷蔵庫のように寒いフロアで熱い戦いが続いている。大会3日目（9月14日）と4日目（15日）はグループラウンドの終盤、全128名を64名に絞る最終段階だ。大会3日目に、勝者側の川端聡、赤狩山幸男、大井直幸、そして大会4日目に敗者側の栗林達の試合があった。いずれも勝てば決勝シングルトーナメント・ベスト64行きが決まる大事な一戦である。
敗者最終でビッグネームが次々に姿を消す。張榮麟はフィリピンのヨハン・チュアに敗退
まず、大会3日目の第一回転、川端はテーブルNo.1、すなわちセンターテーブルで、現在WPA世界ランクNo.1のアルビン・オーシャンと激突。オーシャンはオーストリアの「女傑」
ジャスミン・オーシャンの実弟で、昨年度の本大会で準V、今年の『チャイナオープン』で優勝と、近年一気にワールドトップクラスへの階段を登ってきた。果たしてこの2人の対決は一進一退の攻防となり、ヒルヒルへもつれこむ。最後は1番のセーフティ戦でオーシャンがオープンにしてしまい、川端が遠い1番をねじ込んで見事に取り切りを決めた。「まだ緊張で身体が硬い」という川端だが、この1勝は本当に大きい。
トーステン・ホーマンはスペインのフランシスコ・ディアス・ピサロに4-9と完敗
その頃、会場の隅の8番テーブルでは、赤狩山が台湾のカリスマ的選手・楊清順と交戦中。この試合は、赤狩山が序盤からリードを保ち、終始優勢に試合を進める。楊も懸命に追いすがるが、相手は一切関係なく淡々と己のプレーに集中する赤狩山から主導権を奪うことはできなかった。最後は赤狩山がマスワリフィニッシュ（9-6）。2011年世界チャンピオンが、大舞台での勝負強さをいかんなく発揮していた。もちろん、赤狩山がベスト64で満足するはずもなく「2勝目」だけを見ている。
同日、2回転目には大井が登場。相手はカナダのトム・テリオルト。筆者も初めて観る若い選手だったのだが、はっきり言ってしまえば大井とは格が違っていた。9-2というスコアが示す通りの実力差があったと言って良いだろう。これで大井もベスト64進出。2012年度大会で3位入賞がある大井。もちろん周囲はいつでも「それ以上」を期待している。
栗林は本調子でないながらもヒルヒルの激闘の末に勝利
一夜明けて大会4日目（9月15日）、栗林達の敗者最終戦が行われた。相手はポーランドのトップ選手、ラドスロウ・バビサ。この試合は2時間を越える息詰まる接戦となった。互いにミスが散見され、相手を突き放せない展開。先にリーチをかけたのはバビサだが、栗林がマスワリでヒルヒルに追い付き、最後はバビサの3番ミスから、栗林がじっくり丁寧に取り切って勝利した（9-8）。
勝利を決めてベスト64戦の抽選に向かう栗林
ここで有力海外勢に目を転じると、
張榮麟（台湾）、
トーステン・ホーマン（ドイツ）、
ダリル・ピーチ（イングランド）といった世界タイトル保持者たちが敗者ゾーンから浮かび上がれず、早くも大会を後にしている。ピーチはセンターテーブルで、地元カタールのミシェル・ターキーという選手に討たれた。その瞬間の会場の盛り上がりたるや、まるで地響きのよう。極めつけは、ディフェンディングチャンピオンの
ニールス・フェイエン（オランダ）の脱落。これはフェイエンのセーフティを粉砕してヒルヒルに追い付き、最後はマスワリを決めた韓国の柳承佑を褒めるしかないだろう。やはりこの舞台はワールドトップ達をもいとも簡単に呑み込んでしまう。日本勢4名全員が決勝シングル行きを決めたことは、かなり「優秀」なことだと言って良いだろう。
ピーチを破ってベスト64入りを果たしたカタールのターキー
さて、大会5日目（9月16日）、日本勢のベスト64の相手は、川端がオーシャンと再戦。赤狩山が、張榮麟を仕留めたヨハン・チュア（フィリピン）。大井がアロイシス・ヤップ（シンガポール）。そして栗林が王灿と再戦。試合時間は、川端、大井、栗林の3名が日本時間19時30分から。赤狩山が22時からとなっている。ここからは負ければ終わりの「ノックアウトステージ」。意地とプライドと情熱が交錯する「真の世界選手権」が見えてくる。我らが日本勢のポテンシャルが最大限に引き出される戦いがあることを期待したい。
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