第13回兵庫オープン閉幕
昨年の北海道オープン以来の全国オープン優勝・浦岡隆志
8月29・30日(土・日)の2日間にわたって開催された『第13回兵庫オープン』は、浦岡隆志がファイナルで地元の竹中寛を下して、昨年の北海道オープン以来となる全国ポイント対象試合の優勝を収めて幕を下ろした。なお3位タイには、この大会の準備から運営までフル回転でサポートする兵庫ローテーションクラブ(HRC)のOBでもある高橋邦彦と今年2度目の公式戦準決勝進出を果たした大西想が付けた。
ニッケパークタウンでは多くの人々が試合、イベントを見届けた
この大会が『ビリヤードの普及』をテーマに掲げたのは、『ニッケパークタウン』(兵庫県加古川市)を会場に使用し始めた6年前。以来HRCのメンバーを中心にプロ有志なども交えて、さらにはBCJのバックアップも後押しして、トリックショットショーを行ったり、特に体験コーナーでは例年大勢の子どもたちが夢中になってキューを握ることでも知られる大会へと成長した。
兵庫オープンではお馴染みとなった人気者・『ハバたん』
そして昨年からJPBAと共催という形を取りJPBAポイント対象試合となったことで、出場選手もさらに豪華なメンバーとなり、名実ともに国内有数のトーナメントとして定着した感がある。イベントではスピーカーを通して司会者の声が流れ、歓声や拍手が沸き起こるため、従来の試合とは異なるムードに。だが、それも有意義と捉えるのが大会のテーマを理解しているプレイヤー達で、今年も主役はマスコットキャラクターの『ハバたん』という構図が示された。もはやあの人気には脱帽だ。
3位タイは、HRCのOBでもある高橋邦彦
また年々足を止めて試合を観戦する人数が増えていることもこの大会の特徴で、このあたりは加古川という町にビリヤードが浸透してきていることが窺える。実際、会場でスタッフやプレイヤーと会話を交わす人も確実に増えていて、年中行事の1つとして捉えている人が多くなっていると感じた。過去にプレゼントで配ったキュー持参で子ども達が来てくれることに、スタッフは何よりの充実感を得ていた様子だ。
近年アベレージを上げている大西想が同じく3位タイ
そんなイベント色の強いトーナメントだが、テーブルに向かう選手にブレる様子はなく、特に優勝候補が多数出揃った決勝日の階段を駆け上がった前出の入賞者達の足跡はそれぞれ天晴れの一言。準決勝も紙一重のゲームとなったが、ここは竹中と浦岡が、それぞれ大西と高橋を振り切る形でゲームを決めた。
会場ではたくさんの子ども達がキューを握った
そして迎えた決勝戦。竹中は本大会では2年ぶり2度目の優勝を狙い、勝てば全国オープンでの優勝は一昨年の北海道オープン以来という状況。対する浦岡も前回の優勝が昨年の北海道だったので、ともに北海道以来の全国制覇という珍しい構図となっていた(竹中はその間に西GPで優勝している)。しかもこの2人の対戦は昨年の本大会(ベスト16)以来と、なかなか背景も興味深い。
昨年の本大会以来の両者の激突となったファイナル
好調な両者だったが、先に主導権を握ったのは浦岡。とにかくミスをせずにマスワリを量産し、竹中の小さな綻びも着実にポイントにつなげて、5-1と大きなリードを得てゲームの序盤を追えた。竹中も当然のように反攻の体勢を取るが、交代ブレイクで互いにマスワリを出し合えば先にゴールに届くのは浦岡。終盤もノーミスで浦岡が8-4のスコアで優勝を飾った。
終盤に巻き返した竹中だったが、序盤のビハインドが痛かった
「嬉しいです。ホンマに嬉しい」。ちょうど昨年の北海道と同じように、素直な気持ちを繰り返した浦岡。思えば北海道の時もパブリックスペースでの特設だった。ビリヤードを知らない人達が軽い気持ちで眺める中で、気を抜くことなく最後まで集中を切らさずボールを沈め続けた末のタイトル。いよいよ次なる景色も見えてきたことだろう。
表情から大会の楽しかった雰囲気が読み取れる
最後に、1つ報告を。この大会でキューを握ったのは、214名の参加選手と206名の子ども達。そしてその数十倍の数の通りがかった人が、イベントであれ試合であれ『ビリヤード』を見て空気を感じてくれた。シーズンは秋に入るが、業界は春を迎えようとしている。そんな気がする。
Akira TAKATA