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過去のニュース(2015年)

2015.06.25 プレイヤー

プロフェッショナルの芯

Player Pick up 曽根恭子

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およそ2年ぶりの優勝がかかった曽根恭子の決勝戦。相手は昨年度、そして現在のJPBA女子ランキング1位で、今シーズンの3戦中すでに2勝を挙げている河原千尋となった。会場の『バグース六本木店』でそれぞれの戦いを見守ってきたギャラリーのほとんどはこの時、河原千尋優勢と見ていたに違いない。

河原はこの日、盤石の戦いで決勝に登場した。初戦の土屋純子を7-1、準決勝では今なお日本女子を牽引し続ける女王・梶谷景美を7-0とシャットアウトして今期3勝目に向け死角なし。対する曽根は、前日の予選1回戦で敗れて敗者側からの決勝トーナメント進出。この日も夕川景子久保田知子を相手に、共にヒルヒルにもつれ込む接戦を凌いで決勝の舞台に上がっていた......。

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結果から言えば決勝戦は曽根の7-2。バンキングを取ってマスワリで先制した曽根に対して序盤からミスを重ねた河原。その後の曽根も決して完璧なプレーを見せた訳ではなかったが、ロングゲームを覚悟していた曽根にとっても、双方を応援するギャラリーにとっても意外な大差決着となった。ではその勝敗を分けたポイントはどこにあったのか?

試合中の曽根は、自らのターンを座して待つ時も、ショット中も、ピンチでもチャンスでも、凜とした姿勢と表情を変えることがない。自らが戦う場所はプロフェッショナルが魅せる舞台であり主役は自分。曽根には、その中で常に最高のパフォーマンスを提供するためのルーティンが徹底的に染みついている。それは敗退寸前まで追い込まれたベスト8戦でも準決勝でも、大きなリードを保ったままの決勝でも全く揺れることはなかった。

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高い技術を持つ者同士が決着を付ける場面、ヒルヒル戦や絶対に負けたくない決勝戦で最後にものを言うのはメンタルタフネスだ、と言うことは簡単だ。曽根が2試合に勝利を収め、河原を降した要因にももちろん関係しているだろう。だが、今大会ももちろん、曽根のプレーを支えているのは、それ以前の、土台にあるプロフェッショナルとしての覚悟と矜持、揺れない確固たる芯なのだ。決勝戦の第9ゲーム、自らのポジションミスから招いたピンチを勝利への決定打に変えた7番サイドバンクは、曽根恭子というプロプレイヤーを象徴するショットだった。この時、技術力、メンタルタフネス、判断力の全てが、プロとしての覚悟と矜持の上で揺らぐことなくピタリと止まり、最高の結果を生んだ。

無論、プロとしてビリヤードにかける全てのプレイヤーに芯があり、その上にそれぞれが時間と経験を積み重ねて手に入れてきた武器がある。研ぎ澄まされた技術、闘志、向上心、勝利へのあくなき情熱、自分に対する自信......。どれもプロにとって欠かせないものだが、この日曽根に敗れた夕川、久保田、河原が持つ武器は、勝負を分ける局面で少しだけ揺らぐ瞬間があった。そしてこれが結果の分水嶺となった。

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JPBA入り以後、国内で熾烈なトップ争いを続け、アメリカのWPBAツアーでは地域ツアーで実績を積んだ後に正式なツアープロメンバーとなって戦い、国内ツアーに復帰以降も、積極的に海外試合に挑戦を続ける曽根。ちょうど1年前に自らのビリヤード場『Egg way』をスタートさせ、環境の大きな変化によって、練習量やツアーに向かうサイクルも変わり、優勝から遠ざかることで弱気になる部分もあったという。だがこの日の曽根を見る限り、プロフェッショナルとしての芯は常に太く揺れている様子もない。実際に対戦した3名も恐らく曽根の芯を改めて感じ、次戦以降、いや、これからのプロ生活の糧にしたことだろう。そしてこれがある限り、曽根恭子は今後も、国内でも海外でも、存在感を見せ続けてくれるに違いない。

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