Player Pick up 梅田竜二
5月5日(火-祝)に終了した『第72回全日本スリークッション全日本選手権大会』決勝は、40対40で決着が付かず(40点先取・裏撞き有り)、ペナルティー・シュート・アウトにまで及ぶ激闘の末に、梅田竜二が界敦康を抑えて、自身3度目の優勝を果たした。
ファイナルの界戦では、梅田にフロックが数回見られたのも事実だ。だが、惜しくも優勝を逃した界は「あれもゲームの一部なので、そこに対する悔しさはないです。そうした流れを引き寄せられるのも梅田さんの実力ですから」とただ相手の強さを称えた。
対する、梅田は相手のミスで試合が決着したこともあり、勝利の瞬間には「喜び」を全く表に出さなかった。スコア通りの五分の好敵手として、対戦相手を気遣う敬意があった。この両者のプロフェッショナリズムの高さには、改めて感心させられた次第。
梅田はセミファイナルとファイナルのプレーには満足いかなかったと語ったものの、「ベスト8までの出来と優勝という結果を考えれば、(自己採点は)100点に近い」と大会を振り返った。日本最高峰の大会とは言え、長いキャリア(JPBF入会は1991年)の中で20回以上出場し、既に2勝したことがある大会に、新たなモチベーションを見出すことは簡単ではない。
だからこそ、目標・倒すべき敵を、「過去に優勝した自分」、「ハイアベレージを記録した自分」に設定して今大会に挑んだと言う。そして、それは「現役でいる限り今後も続くもの」だとも。
話を聞いて、何か納得させられた節もある。梅田が試合中、度々左手にキューを持ち直して次のショットまでの間、右腕で素振りを度々繰り返していたことも、決勝前のわずかな空き時間に、会場の『ビリヤード小林』(東京・新大久保)の周りを1人で散歩していた姿も、過去の自分と対話していたところだったのだろうと。
梅田は「今後も国外のトーナメントに出場して行きたい」と、海外挑戦の意欲も高い。そうやってトーナメント・プレイヤーとして競技生活に、"普段"とは異なるアクセントを付ける。戦う気持ちを維持するための、彼なりの技術と見れなくもない。
目標設定や戦意の持続が可能な限り、これからも梅田は現日本スリークッションの代表格として君臨していくのだろうと感じた。そして、強い『過去の自分』が増えたことで、更なる高みを目指すことができるのではないかとも。結局のところ、「この先もまだまだタイトルは増えそうだ」という答えに行き着く。
【ペナルティー・シュート・アウトと試合の公式記録について】
ペナルティー・シュート・アウトとは、トーナメントにおいて試合がタイスコアで終わってしまった場合に、それぞれが初球から撞いて、各自の獲得したスコア(ラン)によって勝敗を決するというもの。
この名称はサッカーのペナルティー・シュート・アウト(一般的にPK戦と呼ばれているもの)と同じ。サッカーのトーナメントの場合、90分+延長戦を戦って決着が付かなかった場合、PK戦でどちらのチームが勝利しても、試合の公式記録は「引き分け」となる(「トーナメントを勝ち進む」または「優勝」の権利はPK戦に勝ったチーム)。
では今大会の場合、公式勝敗記録がどうなるのかをJPBF事務局に確認したところ、サッカーとは異なり本大会においてはペナルティー・シュート・アウトを制した梅田の勝利という扱いになるそうだ。従って、梅田は勝者として優勝を果たしたことになる。