Player Pick up 青木絵美
先ごろ京都で開催された『全日本女子プロツアー第1戦』でプロ初優勝を遂げた青木絵美。国内女子プロの初優勝は2012年の木村真紀以来2年半ぶりの快挙。少し日が経って落ち着いた頃、電話取材に応じてくれた。
本人は「たまたま上手くまわってきたチャンスを掴めた感じ」と試合の2日間を振り返り、「正直、まだ優勝争いに加われるほどの実力がないと思っている」と語った。そこに『謙遜』や『照れ隠し』のトーンはなく、第3者のように冷静な語り口に少し驚いた。
大会を通じて常に冷静に戦い抜いた
青木は愛知県出身。ルーキーイヤーの2009年に『オータムクイーンズオープン』で3位タイ入賞。今回の優勝は、それ以来となる2度目の準決勝進出、そして初ファイナルを制しての戴冠だった。「調子はよくなかったんですけど、そのせいもあってか、邪念というか邪心はなかったです」。堀り下げていくと、「最後まで無欲の自分を通せた」ことも明かされた。
前出の木村が4度目の決勝戦で果たした「悲願の初優勝」だとすれば、今回の青木は「彗星のごとく......」と形容するのがふさわしいのかもしれない。だが、自身の分析とは裏腹に、決勝日の青木は回転を追うごとに仕上がっていた。ファイナルの相手は開催店所属の
光岡純子で、地元の期待を一身に背負って見せたポテンシャルの高さは、確実にグレードアップを果てしていると感じさせるものだった。その光岡の猛追を受けて5-5のスコアに並ばれながらも、セーフティ戦を制して得たチャンスから、「とにかく、勝敗よりも一試合でも一セットでも多く撞きたいと思って」戦った青木は、淡々と取り切り、そしてマスワリで初優勝を決めた。
光岡との決勝戦では初優勝がかかったプレッシャーの中でマスワリフィニッシュ
2年前に神奈川県に出て『MECCA』のショールームで勤務をしながら、仕事の後は練習に励み、男子プロから教わったり、「休みの日には
梶谷さん(景美プロ)や
栗林さん(美幸プロ)に教わったり」して足場を固めてきた。「昼型の規則正しい生活」も試合に向けたコンディション作りに寄与しているという。
そして今回の優勝でもっとも嬉しかったことは「いつも同じ人たちが勝っていた中、私でも優勝できたっていうことで、同期や後輩が『自分も頑張れる』『希望が持てる』的なことを言ってくれた」こと。そして優勝で得た喜びとともに「(自分の)本当にダメなところもたくさん見えた」試合だったと振り返る。
「次は今回はなかったプレシャーを感じながらとか、また新しい感覚でプレーできたら、その中でひとつずつ成長していけるんじゃないかなって思います。そして自分の力で戦って、展開が悪くても引き寄せて勝てるようなプレイヤーを目指したいです」。この客観的な目線こそ青木の最大の武器でないだろうか。
「(今回初優勝をしたことで)初めて青木絵美の名前を聞いた人も多いと思うので、ぜひMECCAのショールームにもお越しください。電話でも私が対応している場合が多いのでお問い合わせもお待ちしています」。電話での取材は終始落ち着いた様子で、彼女のストロークと同様に最後までブレることはなかった。
青木は突如現れた彗星ではなく、忍び足で『いつも同じ人』の中に入りつつあるのかもしれない。
Akira TAKATA