今回は大会を『歴史』と『種目』という観点から見直して、ポケットビリヤードという競技の立ち位置を探るヒントにしてみたい。なお本大会のフォーマットはローテーションゲームの300点先取。300点は15球ワンラックの合計点が120点なので、2ラック半に相当する。ただし、1番から10番までの10個で55点なので2ラックと11球(計41球)と数えることもできる。
日本のポケットビリヤードは『ローテーション』に起源を持つ。その種目の全国大会が65年も続いているということは、ポケットビリヤードが歴史ある競技だと示すのにとても有意だ。本大会に限らず『第○○回』と堂々と掲げることができる点はビリヤードの強みであり、あらためて先人各位に感謝しておかねばならないと感じるところ。
種目に話を戻すと、ローテーションの(プロ)公式戦が年に1度というのは寂しくもあるが、世界の流れの中では止むを得ないことなのかもしれない。しかし世界の中で見た時に、『エイトボール』や『ワンポケット』が公式戦として開かれていないことは非常に残念なことでもある。『ポケット』のプロであれば、やはり一通りルールと戦術には精通していて欲しいと願うのは欲張りだろうか?
昨年のベスト4。左から羅立文、田中雅明、杉原匡、嶋野聖大
さて、今年のファイナルへ到達するのは誰なのだろうか? 東京五輪種目に名乗りを上げたビリヤードが、日本でかくも長い歴史を有していて、また世界のスタンダードと調整を行いつつも国内独自の球文化も大切に継承しているという点も私たちは知った上で伝えてゆかねばならない。先に挙げた優勝者の名は歴代の中でほんの一握り。そこに名を刻むことは、文字通り選手権者の栄誉だろう。