Player Pick Up 林研字
3月8日(日)、『東日本グランプリ第1戦』のファイナルの舞台に立っていたのは2011年世界チャンピオンの赤狩山幸男と、プロ8年目にして初の決勝戦進出の林研字の二人。林はこの試合をJPBAに所属しての最後の1戦として臨んでいたのだった。
朝、会場入りした林に話を聞くと引退を決めた理由はそのひとつとして生活のことを挙げた。2人目の子供が誕生する日も近いのだと言う。東北のプロの一角として東日本グランプリには幾度も決勝日進出を果たしており、関東のビリヤードファンにとっても馴染みがある林が引退を決めたことはやはり寂しいニュースである。
東北から来た家族も見守る中で奮闘した林
「お世話になってるのに1回も試合に呼んだことがなかったので、『最後だし、見にきてくれないか』と伝えました」
林は東北から家族を招いており、夫人や両親達が林の試合をじっと見守っていた。その中で早川英房、矢野裕一を破り、昨年の最終戦の大井仁に続いて東北勢として連続の準決勝進出を果たした。このあたりから、会場の雰囲気は徐々に盛り上がりを増してくる。観客達は組み合わせ抽選時の選手紹介コメントで林が今日を引退試合と決めていることを知っており、その躍進に期待が高まっていたのだった。
準決勝以降は林への声援が幾度も飛び交った
そして田仲海輝を接戦の末に破ってファイナル進出を決め、世界チャンピオンを相手に大きな声援を受けつつ見事に初優勝を手にしたのは既報の通りである。
「出来すぎました。ツイてました」
試合後の表彰も終えてインタビューに応じた林はまずこう語った。本人の調子も最初の早川戦の後半から調子を上げていき、まさに絶好調だったとのこと。並み居る相手を破っていく中で質の高いプレーを見せつつ、展開にも恵まれていた。こういうタイミングに「ツキ」がやってくるのだと実感させられる。
「今日は最後の試合、悔いのない球撞ければ良いかなと思ってました。変な球を撞かずに、相手も気にせずという感じで出来ればと。だけど、まさか自分が優勝するなんて思ってなかったです」
表彰後も賛辞の声をかけるプロ仲間や応援してきた人々がなかなか後を断たなかった。写真は花束を持って駆け付けたスポンサーの堀内氏と(Rei Tip)
この初優勝が最後の試合とはもったいない、というのがビリヤードファンの実感だろう。前戦優勝者シードが東日本グランプリ第2戦で与えられることになるが、実はそこまで引退を延期することも検討中とのこと。実際のところ、どうなるかはまだわからないが今一度、プロとしてこのような舞台でプレーする機会があるならば、その姿を自ずと期待してしまう。
いずれにしろ、この春での引退は既定事項だ。「東北でアマチュアに戻って、ビリヤードを頑張っていきます」と話しており、プロではないひとりのビリヤード人としての新たな林の活躍も楽しみだ。