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過去のニュース(2014年)

2014.10.13 その他

苦境を乗り越えて

遠軽ビリヤード協会の歩み

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遠軽ポケットビリヤード協会のプレイヤー達

全国的にビリヤード場の閉鎖が、プレイヤー達の楽しみの場を奪いつつある今日この頃。愛好家にとってはなんともしがたい逆境の中、ビリヤードを続けたいという想いでその環境を守り続けようとしている人達がいる。北海道北東部の遠軽町では、町からビリヤードをできる環境がなくなるという状況を2度乗り越えてきた。ここでは、遠軽町ビリヤード協会の吉村憲彦氏に寄せていただいた文章を基に、同地でのビリヤードの現状、そしてビリヤード協会としての歩みを以下に紹介したい。

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「ナインボールは番号順に球をポケットに落とす。勝負を決めるのは9番の球である。8球をモノの見事に決めても9番を外せば負ける。最初、球をブレイクした時に9番を入れればそれで勝つ。つまりナインボールは運のゲームだ。だが時には、運も芸術である」

これは、27年前に公開された映画「ハスラー2」の冒頭の言葉。

この映画を見てビリヤードを始めた人もたくさんいることでしょう。そんな中から、真剣に取り組んでいる仲間が集まって、『遠軽ポケットビリヤード協会』(EPA)は、遠軽ビリヤードサークルとして平成15年9月に発足しました。その当時は、遠軽町にもビリヤード場があり、数名のビリヤード愛好家が集まって活動続けていたのです。

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現在の活動風景

ビリヤードを生涯スポーツとして広めるため、そして、会員の「技術A級、人間SA級」を目指すために、平成17年5月に、「遠軽ポケットビリヤード協会」と名称を変更し、遠軽町体育協会に加盟申請を提出。そんな中、平成18年10月には近隣のビリヤード場が閉鎖、業態がネットカフェへと変わりテーブルの台数が5台から2台へと減ってしまいました。

その状況を受け入れ、EPAの活動は細々と続けていくことになります。しかし、ついに平成19年11月、遠軽町で唯一ビリヤードが楽しめたネットカフェも閉鎖され、この地域でビリヤードができる環境が完全に失われることになりました。そこで教育委員会に、『遠軽町総合体育館』でビリヤードのできるスペースを貸してほしいと願い出るも断られてしまい、結果、遠軽町ではビリヤードができない状態に陥ったのです。

平成20年5月、偶然立ち寄ったボーリング場で、ビリヤードのためのスペースを貸してほしいと願い出たところ、「台を用意してくれるならいい」との返事。EPAで用意することでビリヤードができるスペースを作ってもらい、活動を再開することができるようになります。そして、平成20年10月には遠軽町体育協会に晴れて加盟が許可されました。

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女性メンバーもプレー

しかし、活動の場となったボーリング場も不況により閉鎖、再開を繰り返し、平成23年5月に完全閉鎖が決定。遠軽町でビリヤードができる環境が再びなくなってしまいます。

そこで、どこかの空きスペースを借りて台を置くことで、ビリヤードをする環境を守ろうと考えるに至り、平成23年6月から喫茶店の協力で、同店の2階にビリヤード台を3台置くことができました。

当初、上手くいっていたビリヤードスペースの運営も、さまざまな問題が生じ、続けていくことが難しくなってきた矢先、総合体育館の指定管理団体に遠軽体育協会が指定され、その結果、総合体育館にビリヤード台を3台置いていただけることになり現在に至っています。

平成16年から9年間の間に、2度も遠軽町でビリヤードができない状態になりました。今後は、遠軽町体育協会のご協力のもと、総合体育館で末永くビリヤードができる環境が続くことを祈っています。

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このEPAは、8月に開催した『第3回ビリヤード検定』にも、上記の総合体育館を使用して参加している。成績も総じて優秀で、楽しみながら真剣にビリヤードに取り組んできたことが表れていた。

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もちろんビリヤード検定も遠軽町総合体育館で実施

EPAに今があるのは、技術はともかくとしても「人間SA級」が実現されているからではないだろうか。転々としながらでも各所の協力を得つつ、訪れる苦境を乗り越えてビリヤードを続けてこられたことがその証と言っていい。情報を提供してくれた吉村氏をはじめ、協会の構成員の方々のビリヤードを守り続ける努力は並大抵のものではなかったと予想できる。まだまだ景気が良いとは言えないこのビリヤード業界にあって、彼らの活動には見習うべきところが多い。

写真・文/遠軽ポケットビリヤード協会・吉村憲彦