「カスタムキュー」の価値と魅力
多種多様なキューの価値を決めるのにキューメーカーを知ることは非常に重要
「カスタムキュー」という言葉については、前編で「メーカーの規模に関わらず、ごく限られた本数製作されるキュー」と定義した。ではカスタムキューを評価する基準・価値は何だろうか? 最も重要なのは、キューメーカーだ。プレイヤーに「使っているキューは?」と聞けば、大抵メーカー名を答えるほど「誰が製作したキューか?」ということは、大切なポイントなのだ。
キューメーカーの知名度や評価が高ければ高いほど、かつ入手が難しければ難しいほど、そのメーカーが製作するキューの希少価値が上がる。つまり需要と供給のバランスだ。仮に全く同じデザイン・材料で作られたとしても、「どのメーカーか」あるいは「誰が製作したのか」によって、その価値に大きな差が出るのだ。カスタムキューを理解するには、まずキューメーカーを知る必要がある理由がここにある。知れば知るほど、独自のこだわりを持って「カスタムキュー」を製作するメーカーがいくつも存在することがわかるだろう。
こんな芸術品としても価値のある装飾を施されたカスタムキューも存在する
次に重要なのが、キューのデザイン。本来は異なる木材を接合するための構造である「ハギ」や、持ち主の名前を彫るためにはめ込まれたプレートが、他のキューとの違いを表現するための「装飾」に発展したものだ。
キューメーカーは、ベースとなる素材に凹面を彫り、そこに希少な銘木や貴金属、果ては宝石などの素材を埋め込む「インレイ」や、輪切りにした素材を接合面に挟み込む「飾りリング」、素材の表面に細い針などで彫り、染料をすり込んで模様や絵を表現する「スクリムショー」など、時間と手間がかかる技法でそれぞれ独創的なデザインを施している。デザインに凝れば凝るほど、製作時間に比例して高価なキューとなるのだ。また、同じデザインのキューは決して製作しないメーカーや、本数を限定して製作するメーカーも存在する。それらはカスタムキューの中でも、希少価値が高いといえるだろう。
キューとしての性能も欠かせない。内垣建一プロは『TAD』を愛用していることで有名
そして、撞いた際の特性も重要だ。どれほど美しいデザインのキューであっても、球を撞く道具としてプレイヤーを満足させられなければ、真の「カスタムキュー」としての評価は得られない。ハイテクシャフト全盛の現在でも、キューメーカーが木材を厳選し、独自の考えに基づいて製作された「ノーマルシャフト」を標準装備とするメーカーが圧倒的に多い。撞き味にはそれぞれ個性があり、撞き込んで自分のものとするまでには時間がかかるかもしれない。しかしその過程も「カスタムキュー」を所有する魅力なのだ。
さて、本日発売の『CUE'S11月号』より、新連載「私のカスタムキュー物語(ストーリー)」が登場する。毎回「カスタムキュー」に対して熱い思いを持つプレイヤーやコレクターが、自慢の一本、愛用する一本について語り、そのキューを私、K.Kagomiyaが解説するコラムだ。自薦・他薦を問わず、キューオーナーとその相棒であるキューについてお話していただける方を募集中。ぜひ「カスタムキュー」に対する思い入れを語ってほしい。ご興味のある方はcues@bab.co.jpまで。
文・写真/K.Kagomiya