「カスタムキュー」が与えてくれる楽しみ
多種多様なキュー達を集めるという楽しみ方もある
もし新しくキューを買い換える際に、それまで使っていたキューを手放さなかったら、それがコレクションのスタートだ。複数のキューを比較して初めて分かる、一本ごとに異なる個性。それを意識した途端、いつか自分にとって最高のキューに巡り合いたい、色々なキューを使ってみたいという気持ちが芽生えるだろう。それはやがて、
「憧れのプレイヤーと同じキュー」
「評価の高いキューメーカーが製作したキュー」
「過去のキューメーカーによって製作され、現在は入手困難なキュー」
「誰も持っていないデザインのキュー」
「自分がデザインしたキュー」
等々の願望を生み出し、様々なキューに出会い、手元に残すキューが徐々に増えてゆくと、プレイヤーはコレクターとなるのだ。
もちろん「キューを集めてどうするの?」という疑問もあるだろう。しかし、入手したキューを並べてみれば、自身のこだわりや思い入れ、あるいはキューにまつわる様々な思い出が形となって、そこに表れていることに気づくだろう。キューコレクションは、自らの内面を映し出す鏡のような存在なのだ。
コレクターやキューメーカーが集まる場での出会いも収集を通じて得られるものの一つ
コレクションを充実させるためには、中編で述べたキューメーカーだけでなく、キューに使われる銘木を初めとした材料に関する情報や知識の獲得、ショップやキューディーラー、あるいはネットオークションの活用、プレイヤーやコレクターとの人的なネットワークを築く必要がある。キューを入手するまでの苦労やエピソードを重ねることもコレクションの一部となり、コレクター自身を人間として成長させることにもなるのだ。
デザインや素材等を自ら決めて自分のために「カスタマイズ」するのも最高の醍醐味だ
メーカーを選び、重さや長さ、シャフトなどの仕様を決め、デザインや材料を自分好みに指定してキューをオーダーすることは、「カスタムキュー」における究極の形といえるだろう。誰でもプレー経験を積んでくると、自分自身が使うキューに対する不満や、他のプレイヤーが持つキューの良い点などが徐々に分かるようになる。もし自分自身の要望通りのキューがあれば、もっと良いプレーができるに違いないと考えるのは自然なことだ。
しかし、オーダーするためにはキューに関する知識が必要なだけでなく、「自分が欲しいキューとはどのようなものか」をはっきりと認識し、それを言葉や図でメーカーに伝えなければならない。漠然としたイメージを持っているだけでは不十分だ。まだ世の中に存在していないキューを「創造」するためには、キューメーカーや、仲立ちをするキューディーラーと密接なコミュニケーションをとり、一本のキューを生み出すための協力が不可欠だ(この期間は、オーダー主だけが味わえる至福の経験でもある)。
その上で、数ヶ月から数年(メーカーによっては10年以上!)の時間をかけて完成したキューを初めて手にする瞬間は、えもいわれぬ感動がある。もし興味があるならば、いつかはオーダーしてその感覚を味わって欲しい。他の誰のためでもない、自分のためだけに作られた「カスタムキュー」でプレーする喜びを味わうと、ビリヤードから一層離れられなくなるだろう。
キューが様々ある様に、人の好みや楽しみ方も様々なのだ
さて、3日間に渡って「カスタムキュー」の世界について解説してきた訳だが、昨日発売となったの『CUE'S11月号』より、新連載「私のカスタムキュー物語(ストーリー)」が登場する。毎回「カスタムキュー」に対して熱い思いを持つプレイヤーやコレクターが、自慢の一本、愛用する一本について語り、そのキューを私、K.Kagomiyaが解説するコラムだ。自薦・他薦を問わず、キューオーナーとその相棒であるキューについてお話していただける方を募集中。ぜひ「カスタムキュー」に対する思い入れを語ってほしい。ご興味のある方はcues@bab.co.jpまで。
文・写真/K.Kagomiya