Player Pick up 高野智央
高野智央、7年振りの優勝となった
9月7日(日)の『第30回関東オープン』にて実に7年振りの優勝。その間には国内のランキング対象試合で6度、ファイナルを撞いている。「ずっともう優勝できないと思ってました」と試合後に自ら語るほどに1勝から遠ざかっていた。その陽気なキャラクターで全国にファンも多く、プロ仲間からの人望も厚い高野智央の久しぶりの優勝が会場を大いに沸かせた。
アマチュア時代から強豪として名を馳せてから2006年にプロ入りすると、1年目から各大会で上位に残る活躍を見せる。そして翌'07年には『関西オープン』にてプロ入り初の優勝を飾り、年間ランキングでは8位という結果を残した。その後も多数の上位入賞を果たし、あっという間にトッププロの仲間入り。'11年『男子テンボール世界選手権』で9位タイに入るなど、世界の舞台でも活躍する。しかしながらどういう訳か優勝が7年もの間なかったのだ。確かな実力がありながらも優勝への大きな「壁」を自身でも感じていたようだ。
この日はベスト16から土方隼斗との対戦をヒルヒルで切り抜けると田仲海輝を9-5、内垣建一を9-4と順に下していき昨年の『東日本グランプリ第3戦』以来の決勝の舞台に上がった。その相手となる塙圭介も高野と同様に多数の上位入賞がありながら、久しく優勝に手が届いていない選手だ。
ファイナルのテーブルにはいつもの試合以上の緊張感が漂っていた
ファイナルの序盤は一方が取っては他方が取り返すといった締まった展開のゲームとなった。しかしながらゲームが進むにつれて否が応にも緊張感は高まっていった。それが両者のプレーにも表れ、思わぬミスが両者に続出する終盤戦となった。高野自身、「いつも欲が出ちゃうんですね、『勝ちたい』っていう」と、このようなファイナルを戦ってきたきた経験から話す。それが終盤のミスにつながっていたのだろうか、やはりマイナスイメージも強く出てしまうようで「試合中、やっぱり優勝できないのかなあと何度も思った」と語った。
しかしながら恐らく塙も似たような状態だったのだろう。最後に塙にもミスが出てしまい、最後の最後に運が回ってきたのは高野の方だった。残り3球をゆっくりと、慎重に取り切っていった高野がヒルヒルの激闘のゲームボールをシュートした。会場が大きな拍手に包まれる中、高野は声なくキューを置き右の拳を握りしめた。
技術的にも、「キューを柔らかいものに変えたことでイメージがよくなっている」とのこと。まだ新しいキューのデビューから3戦目だったが、今週末も『東海グランプリ』が控えている。この一戦で優勝の「壁」を越えた新しい高野が新しいキューとともに今年の後半戦をさらに盛り上げることだろう。