第27回ジャパンオープン
今年のチャンピオンはアントニオ・リニング(左)と呉芷婷
流れるようなランアウト(取り切り)が多く見られ、テンポの良い男女のファイナルゲームだった。本筋とは関係ないが、4名のファイナリストの内3名がサウスポーだったという珍しい最終章だったことも付記しておきたい。
呉は北陸オープンに続いて日本でビッグタイトルを獲得
先に優勝を決めたのは女子の部の呉芷婷(台湾)。セミ・ファイナルで展開に苦しんだのとは一転して、序盤から快調にランアウトを重ねる。ファイナルにただ一人残ったJPBAの李佳は、0-5とされた時にたまらずタイムアウト。しかし、それでも流れは変わらない。7-2で迎えた第10ゲーム、1番ボールを巡るセーフティ戦で李がファウルを犯すと、そこから呉はそれまでと同じように伸びやかなストロークで取り切りを決めて、初めて日本の頂点に立った。
「この会場の雰囲気がとても好きです。今日はテーブルコンディションを掴むことができたことが勝因だと思います。優勝できて嬉しいです」(呉)
リニングはモリスを相手に全くペースを握らせない巧さをみせて2度目の戴冠
そして、男子の部では、アントニオ・リニング(フィリピン)が9-5でロドニー・モリス(アメリカ)を破って、2006年大会に続く自身2度目の優勝。序盤から巧みな試合運びで展開を掴んだリニングは、モリスがブレイクに苦しんだこともあり、取り切りを重ねて8-3で先にリーチをかける。そこからのモリスの巻き返しは2点でストップ。一定のペースで淡々と巧みなショットを繰り出すリニングがラストランアウトを決めた。数年前に病を患い、それが影響してか、勝ち星から遠のいていたリニング。この勝利で完全復活と言えるだろう。
男子ベスト4。左から3位タイ・青木亮二、準優勝・モリス、優勝・リニング、3位タイ・早瀬優治
握手もそっと控えめで、表彰式でも笑顔がぎこちないのがリニング流。皆の祝福の言葉に、「ありがとうありがとう」と呟く無骨なビリヤード職人。その球はこの日のニューピアホールで最も雄弁だった。
女子ベスト4。左から3位タイ・夕川景子、優勝・呉、準優勝・李佳、3位タイ・和泉早衣子
元「編K」ことBilliards Days 小林亨