第6期女流球聖戦・球聖位決定戦
挑戦者を退け防衛に成功した佐原
「前から上手いと分かっていましたが、戦ってみて『やっぱり上手い!』と思いました。最後の最後まで気が抜けなかったです」
これは先の『第6期女流球聖戦・球聖位決定戦』で2度目の防衛を決めた表彰式の中、司会者から対戦相手である平口結貴(東日本代表・北海道)の印象を聞かれた際の佐原弘子のコメント。フルセットのフルゲームに及んだ今年の女流球聖位決定戦は、12時間を超える、正に"死闘"と呼ぶにふさわしい激闘であった。
苦戦しながらも見事に戦い抜いた
先週末に『東西代表決定戦』『女流球聖位決定戦』を告知する記事を、3選手の紹介文的な方向で記した(その記事はこちら)。その中で女流球聖位決定戦を過去に2度経験している佐原について、抜きん出た実績を持つ実力者であることに加え、決定戦という特殊なロングフォーマットを過去2年に渡って経験しており、長い一日を戦うという点についても不安要素がないであろうことを記した。今回の結果は紙一重ながらも、やはり彼女の経験値の高さが勝利を掴んだものと窺える。
佐原と親交が深く、この日も応援に駆け付けた初代女流球聖位(1期、2期在位中にプロ転向)の久保田知子プロ(JPBA)は、今回のカードについてこう語っている。「全国大会常連の女子選手の誰が(挑戦者として)来ても、佐原さん優勢と思っていました。でも、彼女(平口)が相手だと佐原さんは大変じゃないかな」と。平口の未知数の実力、若さを駆る勢い、そして今年から採用された交互ブレイクなどの要素を含めて、久保田プロの目には平口が最難敵に成り得ると映っていた。
女王・佐原を最後まで苦しめた平口
そんなプロの目は見事に的中した。第1セットを取ったものの、本来のペースを掴めない佐原を後目に、平口はチャンスを確実に得点につないで、セットカウント2-1と逆転に成功する。解説を務めた川端聡プロ、大井由希子プロ、そして松田翼プロ達が口を揃えて「そろそろ佐原さんがペースを戻してくるだろう」と、試合中盤で予想するも、崩れる気配のない平口を前に、アマ女王は苦しい展開を強いられた。
喰らい付く平口を相手にフルセットの末、勝利を収めた
そんな状態でもセットカウント3-2と逆転を果たして、防衛まであと1セットとした佐原。周囲が「本調子でない」と感じる体勢でも、ポイントを取るのは「さすが佐原」と言ったところ。だが追い込まれても喰らい付く平口がフルセットへと持ち込む。
逆風にもじっと耐え、ジャッジに「らしくない」ミスが出るほどの精神状態に追い込まれても、決して逃げることなく闘う佐原。それは苦しみもがきながらもベストを尽くそうと懸命に踏ん張るアマ女王の姿だった。
今回、佐原陣営が用意した応援幕のコピーは『更なる 高みへ』。2度目の防衛戦を闘い抜き、そしてタイトルを守った佐原は、かつてないスケールの経験値を追加したに違いない。次に対戦する時には更に手強い存在になることが予想される平口の存在もまた、今後の佐原をより強くさせることだろう。死闘を制した佐原は、自身が未体験の高みを覗き見たと感じる。
大熱戦を繰り広げた2人の今後にも注目だ
最強のアマ女王として君臨し続けてきた佐原は、1日の体験を経て、確実に次のステージへと突入した。2人の対戦について、「計り知れない重圧。これは本人たちにしかわからない域のもの」であると前出の川端プロは語った。つまり佐原の最強伝説は、この日を境に、より強靭なものになったと見てよいだろう。そんな女王を脅かした平口については、また別の機会に記すこととしたい。
Akira TAKATA