Player Pick up 羅立文
既報の通り、週末に行われた『東日本グランプリ第2戦』は羅立文の勝利で幕を閉じた。会場となった『ハイランドビリヤード』(以下、ハイランド)は、プロの間でもコンディションを合わせるのが難しいと言われる場所だった。
改めて説明すると羅立文とは、ビリヤード強国・台湾の出身で、プロとしてはJPBAに籍を置く現在国内を代表するトッププレイヤーの一人。ハイスペックなパフォーマンスは「精密機械」と評される。
2007年から拠点を移し、今や日本語も不自由なく操り、昨年は日本代表として『ワールドカップオブプール』に大井直幸とコンビを組んで参戦した。なお、6日の決勝日に身に纏っていたブルーのポロシャツが、その時のユニフォームである。
プロは日本の文化を十二分に理解しているが、感情表現などは日本人のそれよりもストレート。マナーの範疇を逸脱しない程度に怒りを示すこともあれば、ギャラリーの拍手を誘うかのように喜びを表に出すこともある。
特に後者はプレーに良い影響を及ぼしていると教えてくれた。ゲーム中、思考を無数に巡らせ、自らとの問答を繰り返す中で、「全てをため込みたくない」というのが正直な心情。これも技術の1つだ。そして、負の要素を発散してしまえば、少なくともこの国においては我がままと写りかねないということもよく理解している。
試合後の談話で、普段、「ハイランド」をホームとしていることが、アドバンテージとなっていたとも自ら明かしてくれた。質問の前にそれを打ち明けてくれるあたりに、誇りを持って球に向き合っている真摯な姿勢が見える。
昨年末に行われた『フレクシェカップ』で優勝した羅。だが公式戦は未勝利のままシーズンを終えた。JPBAランキングにおいて2位を確保したことは、ハイアベレージなプロ故のなせる技だった。
それでも「勝てない時期はスゴく悩み、反省する」ということの繰り返し。その辛かった時期を乗り越えての約1年半ぶりの優勝が今回だったのだ。
--昨年は勝てませんでした。壁に『Enjoy Billiards』と書いてありますが、今日は楽しめましたか?
「はい、楽しめました。決勝以外はね(笑)」
繰り返した反省をこの日は6割程度は活かすことができたそうだ。残す4割は決勝の内容に満足いかなかったから。
そして、その反省がこれから行われるのだろう。「精密機械」の"オーバーホール"はほぼ完了といったところ。