第23期球聖戦・球聖位決定戦
埼玉県『ビリヤードクラブ5&9』 球聖戦は昨年の球聖のホームグラウンドにて行われる
4月6日(日)、埼玉県所沢市『ビリヤードクラブ5&9』にて第23期球聖戦・球聖位決定戦が開催された。第22期球聖、喜島安広(埼玉)が5期連続球聖位という大会史上初の大記録を打ち立てるべく挑戦者を迎え撃つ。
多くの声援を背に受け喜島は4度目の防衛に挑んだ
そしてその挑戦者は前日に球聖戦・東日本代表の中野雅之(東京)をその高い技術で破り、この決定戦へと駒を進めた西日本代表・大坪和史(広島)である。大坪は第17期球聖で今回は6期振りの復位を目指した試合となる。
西日本代表・大坪
試合は10時に開始となった。第1セットの第1ゲーム、オープニングラックから高度なセーフティ戦が展開された。そのゲームは喜島が取るも、やはり高いレベルの試合になる事を予想させた。ヒルヒルで迎えた第1セット最終ゲーム、このセットをほとんどミスなくこなした大坪が先取。
苦しい第1セットをモノにした大坪は完全に流れを掴んだ。第2セットはまったく喜島を寄せ付けないプレーを見せて7-1とし、3セット目も7-4にまであっという間に持っていった。大坪、いきなり3セット先行する。
喜島、序盤は流れを掴めず先行を許すが中盤で爆発
しかし4期連続球聖位・喜島、そう容易くその座を落とされるはずもない。ホームの応援を背に受け、次のセットから徐々に流れを掴みだした。第4セットは喜島が中盤にリードを奪うと一気に引き離し、食らいつく大坪をなんとか振り切り7-5で初めてセットを取る。
お互いの実力が拮抗しているのは明らかだ。内容的には非常に競った試合をしている。セットカウントを左右するのはほとんどどちらに傾くか全くわからない試合の「流れ」だけだ。それは両者の間を行ったり来たり。直後に大坪があと1セットまで辿り着いたと思えば喜島が爆発力を見せて一気に取り返す。気付けばセットカウントは4-4のフルセットに。
フルセットで迎えた最終セットのバンキング前、両者は固く握手を交わす
最終セットに入ると徐々に大坪が喜島に行ってしまっていた流れを取り戻す。最終セットのオープニングブレイクをマスワリでスタートし、気力を振り絞る。しかし最後の大声援を受ける喜島も前セットまでの勢いそのままに得点を重ね、ほんの少し先行する。6-5と先に球聖位に王手をかけた。
このまま勝利を手にしたい喜島のブレイクで始まった第12ゲーム、ブレイクは素晴らしい当たりで3個イン。しかし惜しくも取り出しがシュートに行けない。シュートアウトを選択した喜島に対して大坪はこのプレッシャーのかかる場面で果敢に縦バンクにトライした。そしてそれを見事沈めてそのまま取り切り、大坪もまた王手をかける。
観客も食い入る様に台上を見つめる
フルセットで迎えた最終セットもなんとヒルヒル対決に至る。とてつもない熱量を持ったこの試合、最後のブレイク権は大坪。ここまでの試合の中、良いブレイクが続く時間帯とどうしても取り出しで嫌われる流れと両方があった大坪の最後のブレイク! 取り出しのコンビネーションショットを見事に決めるとあとはトラブルもない配置となった。
着実に1つ1つこの長い戦いの締め括るように取り切り、最後は9番ボールをコーナーに沈めた。精緻なボールさばきを見せ、相手のホームの雰囲気に呑まれることもなく高い技術と強い精神で戦った大坪が第23期球聖位の座に就いた。
長時間の試合を最後に制したのは大坪!
どちらが勝ってもおかしくない好ゲーム。この日の試合は明確に「流れ」が存在していたように見えた。そういったものを掴む「運」がごくわずかだけ、大坪が持っていたのかもしれない。冬に戻ってしまったかのような寒さの中、12時間に及ぶこの熱い試合をフルセット、フルゲームで戦った両者に全力の拍手を送りたい。