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過去のニュース(2014年)

2014.03.20 プレイヤー

西日本左右の両エースに想う(後編)

階段を登るために必要なこと

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田中雅明


一昨日の記事で記したように、川端聡田中雅明という西日本左右のエースは、面白いほどに対照的な部分を多く有している。もちろん、先の西日本グランプリ(GPW)で川端とファイナルを戦った竹中寛や、翌日のローテーションで田中に敗れた杉原匡も、やはりそれぞれに個性を備えているから、川端と田中が両極の代表的存在という程度なのかもしれないが。

そんなタイプの異なる2人だが、傍から見ていると共通点も多い。アマチュア時代に突出した成績を残し日本中から注目される存在であったこと。プロ入り後に一層の磨きをかけたスキルで、世界選手権やアジアンツアー、アジア競技大会などに日本代表として海外試合に参戦して更に経験値を高めてきたこと。クッションやブレイクなど、あらゆる技術の探究に貪欲で、その練習は今なお『オタク』と呼ばれるほどのめり込んでいること。

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川端聡


今回の全日本ローテーションでは、東日本のプロが1人、決勝戦が終わるまで鋭い視線で戦況を見つめ続けていた。そして終了後は1人で球を転がし始めた。それを脇目に会場を後にした田中が「彼は強くなるでしょうね」とポツリと漏らした。リアルな戦いを肌で感じ、冷めない内にキューを握る。それほど有意義な練習は他にないだろう。

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竹中寛


以前に川端もこんな事を口にしていた。少し前の話なので意訳になるが、「試合に負けたから帰るんじゃなくて、帰るから負けるんじゃないか」と。確かそんなニュアンスだったと記憶している。これはトッププロの多くが同様に観戦の重要性を説いてきたが、近年はあまりそうした光景を見る機会がない。もちろん、そこには個々の事情や哲学があるだろう。

確かに試合をあまり見ることなく帰る強い選手もいる。しかし彼らも階段を登る過程では、必ず経験値を大きく高める場を得てきている。今回、GPWのファイナルで敗れた竹中寛は、今なお時間が許す限り最も熱心なギャラリーとなっているし、ローテーション準優勝の杉原はアマチュア時代からオープン戦のファイナルを何度も経験してきた。

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杉原匡


繰り返しになるが、川端も田中もアマチュアの時に既にスーパースターとして注目され、プロ転向後も国内外で貴重な体験を山のように積み重ねて現在に至っている、いわばエリート中のエリートだ。そして今もなお研究と練習を続け進化するアラフォーたち。彼らに追いつくために必要なことは、自らが決勝戦で惜しみなく教えてくれている。そう感じた姫路の2日間だった。

Akira TAKATA