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過去のニュース(2014年)

2014.01.30 プレイヤー

福家でも金、栗林でも金

Player Pick up  栗林美幸  ー関西オープン最強の女が復活Vー

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4度目の優勝という偉業を成し遂げた"栗林"美幸


「嬉しいです」

弾んだ声だった。優勝を決めた直後の栗林美幸は晴れやかな表情でそう言うと、「あとで子供と写真撮ってもらえます?」と続けた。自身の出産にともない1年と8ヶ月の活動休止を経て、復帰5戦目でタイトルを獲得した喜びを露わにした雰囲気で。

栗林(当時は福家)のプロデビュー戦は2003年の『第1回関西レディースオープン』だった。それまで男子だけの開催だったので、栗林のプロとしてのキャリアは本大会とともに歩んできたとも言える。そして産休期間の2回を除く9度の参戦で4度の優勝、そして準優勝が1回。彼女にとっても、これほど相性の良いトーナメントは珍しく、不思議なめぐり合わせとさえ感じる。

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そんな彼女のデビュー戦は決勝戦で曽根恭子に逆転負けを喫するも、アマチュア時代に全国タイトル2冠の実績、そして当時プロテスト女子最高得点697点の大型ルーキーが鮮烈に『フケミユキ』の名を知らしめた大会となった。「3年以内にタイトルを獲れなければプロを辞める」そんな決意を胸にしていたことは意外と知られていない。そして2年半という年月を経て初優勝。以後の活躍は周知の通りだ。

栗林が産休から復帰を果たしたのは去年の9月。「ショットが出来ていない。だから無理だと解っていたけど、『出来る』って自分に言い聞かせて出場しました」。だが1年半の間、まったくキューを握っていなかった栗林。「ごまかしながら撞いて」復帰初戦で2日目(ベスト16)に残るも、「わかっていたことだけど、(当時の状態では)ぜんぜん無理でした」。そして「準備をするしかない」と時間を作ってはキューを握った。

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復帰4戦目となる昨年の最終戦『全日本選手権』で遂に「自分の中で『戦えるな』という感触」を感じた。「去年の4試合はテスト。それで箸にも棒にもかからなければ復帰は見送る」つもりだったという。そして栗林は母親、妹、時には祖母の手も借りながら練習に励んだ。今回は「初日は山内さん(公子プロ)のお母さんに、2日目は光岡さん(純子プロ)に、子供を見てもらって」試合に臨んだ。「だから、今回の優勝は本当にみんなのお陰なんです」。過去の数々のタイトルとは少し異なる感覚なのだろう。

「ランキングも落ちて、台風の目的な(笑)? 名前も変わって、『誰それ?』っていう人もいると思う。みなさん、栗林美幸という名前を覚えてください(笑)」と明るく締め括った栗林。上がり際の8番ミスが彼女のブランクを感じさせる1球なら、直後にまわってきたゲームボール(9番)を「(観客がしらけるので)絶対に外したらイカン」と思いながらポケットのど真ん中に叩き込んだのは「これぞミユキ」的な1球だった。

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冒頭の約束の1枚。夫・栗林達(プロ)、将来のサラブレッド(!?)と共に


独身、既婚、育児中、様々な環境の女子選手がいて、それは世の中の女性もみな同じ。自身の境遇に重ねて夢を託すことができる存在なのが女子プロかもしれない。だとしたら栗林の復活劇は大きな起爆剤となる可能性を有しているだろう。しかし厳しいメンバーが揃う国内女子戦線において早々の復活優勝はさすがの一言。次なる彼女への興味はやはりコレではないだろうか?

----「栗林美幸は福家美幸を超えるのか!?」

Akira TAKATA