【寄稿】四ツ球のススメ
今年の10月、大阪府泉佐野市の『ビリヤード辻』において、『第45回近畿四ツ球優勝大会』という名の歴史あるイベントが開かれた。これは大阪府ビリヤード組合主催、関西キャロム連盟主管により、ポケットビリヤードが主流になった現在も連綿と続くものだ。
『ビリヤード辻』で行われた大会の模様
ビリヤードと言えば「四ツ球」の時代は大正から昭和にかけて長く続いたこともあって、特にシニア世代の方々には「四ツ球」という言葉には馴染みがあり、実際にプレーされたことのある方々も多いだろう。だが、そこから月日が流れた現在、日本のビリヤードはポケットビリヤードが主流となり、残念ながら全国的に「四ツ球」のプレー人口は減少してきている。
そんな状況の中、この大会に出場した一人の女性プレイヤーが、「ぜひ多くの方々に四ツ球の存在を知ってもらい、プレーしてもらいたい」と、本誌編集部に結果や写真とともに、「四ッ球」に関するリポートを送ってくれた。この女性、西田佳映さんは、長年に渡りポケット(JPBA)、キャロム(JPBF)両方のプロプレイヤーとして活躍してきた(現在はJPBF所属)江辺公昭プロのお店、大阪府堺市の『プールホールGR』で広報も担当している方だ。
大会の決勝戦の模様。プレーしているのが西田さん
四ツ球の初球の例
4.得点できなかった場合、現状配置のままプレイヤー交代となります。
●四ツ球のファウル
「2度撞き」「キューミス」「球触り」「球間違い」はファウルとなり、現状配置のままプレイヤー交代となります。
●四ツ球の特別なルール
自分の手球が他の球に完全に接触している場合、「現状配置のまま撞く」か「初球配置に戻す」かを選択できます。
●四ツ球で学べるポケットビリヤードの技術
1.キャノンショット
2.手球のポジショニング
3.セーフティ
四ツ球が上達すると、手球のコントロールはもちろん、ポケットビリヤードでは掴みにくい先球(的球)の動きも理解できるようになります。もちろん、バンドゲーム(ワンクッション)やスリークッションなど、より難度の高いキャロム競技の理解、技術の向上にも繋がります!
●プレイヤーの皆様へ
まず、キャロムの場合、取り方を教えて下さる方がいない状態で、いきなりスリークッションをプレーして上達する事するのはなかなか大変なことです。なぜなら、ポケットビリヤードのナインボールやテンボールなどと違って、自分で取り方を構想しなければならないからです。
さらにテーブルにはポケットがなく、撞いた手球も的球も台の上を走るので手球と目的ではない的球の「出会い」を避ける事も考えなければなりません。このようなことからも、スリークッションをプレーする前に、まず、ビリヤードそのものの理屈や道理を眼で身体で早く身に付ける事ができる四ツ球やバンドをプレーされる事をススメたいのです。
バンドゲームは国際競技大会の正式種目にもなっている(写真は7月に行われた『アジアインドア・マーシャルアーツゲームズ』)
ポケットビリヤードのA級プレイヤーの方々にはよく、「四ツ球は辛気臭い」とか言われますが(笑)、実は辛気臭く見えるレベルにまずなるのが大変ですし、最初は4つの球じゃ足りないくらいで、10点連続で当てる事は非常に難しいんです。
長らくポケットとキャロム、双方のプロとして活躍していた江辺公昭プロ(写真は5月に行われた『第70回全日本スリークッション選手権』)
江辺プロ曰く、「四ツ球でアベレージ5点(10キューで50点)が出せるようになれば、大体『ビリヤード』がわかっている状況」ということで、そんなポケットのA級プレイヤーの方には四ツ球ではなく、バンドゲーム(ワンクッション)をプレーする事を勧めています。ちなみに、バンドゲームではアベレージ2点を出せたら大したものです。
エフレン・レイズはキャロムもハイレベルでプレーする(写真は11月に行われた『第46回全日本選手権』
例えばエフレン・レイズがそうであるように、海外のポケットプレイヤーで有名な強い方はキャロムも非常に上手です。韓国では『赤・赤』という四ツ球の台で遊ぶ競技が流行っており、皆さんポケットの手球・先球(的球)コントロールが抜群です。日本のプレイヤーの皆さんにも是非、もっと四ツ球をプレーしていただいて、高い技術を持つポケットプレイヤーが多く増える事を願ってます!