Player Pick up 呉芷婷
試合中はずっと眉をひそめた面持ちでテーブルに集中。困っているようにも見える表情だ。あどけなさの残る可愛らしいルックスと鋭いプレーとのギャップが鮮烈な台湾の呉芷婷(ウー・チーティン)は17歳。週末の『北陸オープン女子の部』、ファイナルで同胞の郭思廷を倒して嬉しい日本初優勝を飾った。
「信じられない気持ちです。とても嬉しいです」と、試合中とは違う屈託のない笑顔を見せた彼女。コメントを求めた時、ようやく17歳らしい素の表情が表に出てきた。
呉はこれで3度目の来日。昨年の『全日本選手権』ではベスト16。今年の『ジャパンオープン』では優勝した「日本のエース」河原千尋にセミ・ファイナルで敗れて3位。そして、今回の北陸オープンではセミ・ファイナルで河原にリベンジを果たした上で優勝した。筆者の知る限り、呉と河原はこれまで国内外で4回対戦し、呉の3勝1敗。このことからも彼女の強さが窺い知れる。
3度目の来日でビッグタイトルを獲得
10歳からビリヤードを始めているので歴はすでに7年。現在は高校生として学校に通いながら、毎日昼すぎから8時間練習しているのだそう。「世界チャンピオンになりたいです」。はにかみながら、しかししっかりと目標を語る。好きなプレイヤーとして男子では
R・スーケー、女子では台湾の先輩、
蔡佩真の名前を挙げた。
まだ台湾国内でも目立った戦績はなく、今回北陸のファイナルテーブルについた時には「かなり緊張した」という。しかし、2歳上で台湾国内タイトルを持つ郭(彼女もまた将来性を感じさせる大器だ)を向こうに回して堂々のプレーを披露。ありきたりだが、「練習は裏切らない」ということを彼女のプレーが証明してくれたように思う。
北陸女子を制圧したチーム台湾
台湾ビリヤード界も一時に比べて、若手プレイヤーの数が減っているという。しかし、それでもなお呉のような若い才能を輩出してくるところに「撞球強国」の底力が感じられる。整備された若手育成体系とトレーニングメソッド。そこに身を浸すことで、呉のような素直で努力家のプレイヤーは確実に伸びていく。まだ17歳。呉はこれからどれだけタイトルを増やすだろうか。
T.KOBAYASHI(B.D.)