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過去のニュース(2013年)

2013.10.08 プレイヤー

小倉の活火山、秋の空へ復活の狼煙

Player Pick up  北谷好宏

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北谷好宏が北陸オープンの決勝戦でゲームボールを沈めた瞬間、ギャラリー席の一角にいたプロ仲間達は大歓声を上げ、そして抱き合って号泣した。これは北谷というプロプレイヤーの人物像を端的に表すエピソードであり、また彼の生き方を示すにはほんの一部にすぎない、そんな一幕だった。

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北谷は優勝直後、控えめにほんの少しだけ拳を握った


今春に試合会場で北谷から「(優勝する)イメージは出来る状態なんだけど、流れが来ない」といった旨の言葉を聞いた。過去にプロ公式戦で4勝。その最後が2005年だから、久しく優勝から遠ざかっていたことになる。だが北谷がそう言うのであれば、優勝候補の1人と見て間違いない。他者のプレーを観る眼もさることながら、自身の分析にも長けた選手だからだ。

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プロ仲間達は我が事のように北谷の優勝を喜んだ


事実、年齢やプロ入りの時期を問わず、北谷にアドバイスを乞うプロは多い。一昨年の全日本選手権で日本人最高位の3位入賞を果たした竹中寛。彼も本誌のインタビューで、その大会期間中に不調のどん底だった状態を、北谷の助言で立て直したという話を残している。北谷という人物を否定する者は皆無だが、技術に関しても同様だ。それがビリヤードの大会で、特に男子の試合では極めて珍しい冒頭のシーンへとリンクする。

優勝の翌日に電話で話した彼はやはり落ち着いていた。勝てた喜びは受話器を通して伝わってきたものの、技術論に及ぶと興味深い話が次々と飛び出してきて、優勝者へのインタビューとはほど遠い国内プレイヤー分析談話にいたっては、聞き手として先を求めずにいられない鋭い視点とその眼が捉えている実像を聞かせてくれた。

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北谷は常に、ビリヤードとも人とも真摯に向き合ってきた


細部は別の機会に譲るとして、今現在の北谷は「ブレイクだけ、と言われるのがイヤだった」時期を経て「ブレイクが良ければ勝てる」時代の訪れに好感触を得た様子。これらの話はブレイクの鮮烈なインパクトが先行しての話で、トータルスキルも高い水準にあることは周囲も認めるところ。実父である好美氏がスリークッションのプロであることもあり、北谷自身もまた国内ポケット界では1、2を争うスリーの名手でもある。

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北陸では大きな武器であるブレイクとトータルスキルががっちりと噛み合った


さらに故桧山春義氏への想い、北谷がプロデビュー当時に絶対的四強と呼ばれた奥村健(現JPBF)、利川章雲高橋邦彦川端聡を今なお追い求めていること。北谷の同世代グループが進化を続けて強い層が形成されていること。そして大井直幸栗林達土方隼斗たち後輩世代の台頭にも、ニュートラルなスタンスで個々の長所短所もしっかり見ている。また後輩から厳しい助言を受け、それを吸収していることなども語ってくれた。

今回の勝因を探るとすれば、「昨年の中ごろから気持ちの持ち方を意識して変えた」こと。直前に少し試合から離れた経緯もあり、「欲がなかった」ことも追い風となったという。決勝日の初戦に高橋に勝ったことは、トーナメントを駆け上がる最大の契機となったとも明かす。この先に求めるのは「入れる技術をより多く持つこと」で、これは厚みの精度を高めることとは意味合いが異なり、「こう撞けば入る」というシュートテクニックをさらに磨き増やすこと。シンプルで明確な指針も彼のキャリアと視点があってのものだろう。

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北陸の地で復活の狼煙を上げた北谷。全日本選手権でももちろん、大噴火を狙う


そして「兄弟で決勝戦」を目標に掲げた。仲が良いことで有名な弟の北谷英貴もまた「(優勝を)狙えるレベルまで」成長しているのだとも。戦うフィールドに身を置きながら、「気は優しくて力持ち」な北九州は小倉の北谷兄弟。そんな彼らの頂上決戦が実現したら、会場はどんな雰囲気に包まれるのだろうか。そして「まあ、オレが勝つんですけどね」と兄は笑う。復活の狼煙は力強く深い秋の大空へと放たれた。

Akira TAKATA