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大会には現役プロから伝説の猛者まで、50歳以上の28名が集った
ポケット界の重鎮、伝説の猛者、そんな顔ぶれが集まるとムードが重くなりそうだが、むしろ笑顔が多く同窓会的な雰囲気だ。だが優しい表情の中に、時に鋭い眼光をキラリと覗かせる。やはり長年に渡りキュー1本で戦ってきた経験によるものだろうか。
スキルは総じて高いレベルにある。それも決勝トーナメントに入ると殊更で、特にフリーボールからの取り切る率の高さは、ショットスキルに加えてより適確な構想があってのものと窺えた。また古くは「攻めが美徳」であった日本のビリヤードだが、多くの参加者がセーフティにも長けていたことは現役であることを示していたと言える。
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ファイナルは横田武(写真左)と岡崎伸次の戦いとなった
そして速さ。「歳を取るとせっかちになるからね(笑)」というコメントもあったが、形になれば無駄なく取り切る様は、『上手さ』を表すものだろう。まさに熟練した匠の技。また勝敗に無頓着に見えるのは、積み重ねた数多くの勝負から得たもの。終了後は常に笑顔でいたことも印象的。
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優勝を果たした横田。さすがは現役プロという鋭いプレーを見せた
試合の方はというと、横田武が3年ぶりの優勝を狙った岡崎伸次を決勝戦で下して、4年ぶり2度目の大会制覇を果たした(スコアは6-3)。3位タイには福井の道川浩と大阪の上野慶二が入った。ファイナルは戦略的な故意ファウルがあったり、最終ラックは「想定の範囲内だった」(横田)という縦バンクを交えたマスワリで締めるなど、やはり見応えのある戦いとなった。
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大会ベスト4。左から3位タイ・道川、優勝・横田、準優勝・岡崎、3位タイ・上野
年齢や体力に左右されにくく生涯スポーツとしても魅力あるビリヤード。会場ではこの大会をもっと華やかな舞台へ移そうという意見も出るなど、まだまだシニアも進化しそうな気配だ。若手と呼ばれる選手がこの大会に参加する頃、どのように進化を果たしているのか、ビリヤードの未来を楽しみにしたい。