Player Pick Up 田中雅明
4年振りのGP制覇を果たした田中雅明
「モノを作ったりすることは好きだったので、大工さんとか、そういう仕事についていたんじゃないでしょうかね」。過去のインタビューにおいて「ビリヤードをしていなかったら?」という質問に田中雅明はこう答えた。
そして京都という土地柄を考えると、漆塗であったり螺鈿細工であったり、いずれにしても伝統工芸に携わる職人の姿を思い浮かべた。あるいは仏像を彫っていても似合いそうだ。好きなモノを作り続け、随所に他者が真似を出来ない技術が織り込まれていて、それでいて技量をひけらかすことなく、頼まれた仕事は気持ちよく引き受ける。そんな職人像を。
GPでは不変の田中スタイルで観客を魅了した
4年ぶりに西日本グランプリを制した田中。その紹介記事に冒頭から余談が過ぎると思われるかもしれないが、この『職人像』は彼のビリヤードそのものとシンクロしている。ハードショットを好まず、手球を美しく転がして理想のポジションを目指す。多くのプレイヤーが嫌うハーフスピードを多用するスタイルも不変のもの。
2008年から2009年にかけて同シリーズでは3連覇を達成し、2009年は日本ランキング1位の座に輝いた。翌年にはアジア競技大会日本代表として日の丸を背負って戦った。そんな実績とキャリアを持つ彼にしては、ここ数年のタイトルのない状況は"低迷"とも見受けられた。
「いや、状態は悪くなかったし、そんなに気にはしていなかったです」
確かに今シーズンもハイアベレージを戦績で示し、抽選で田中の隣を引いて喜ぶ選手は皆無だ。そして黙々とテーブルに向かい、淡々とボールを沈めてきた。もちろん今回もしかり。
準決勝、田中と大井の試合は今期GPのベストバウトとも言える好ゲームだった
そんな彼が今回は普段より大きなアクションも見せた。準決勝(対
大井直幸戦)の前に司会を務めた
川端聡からマイクを向けられると「(自分が)優勝すると思います」と、珍しく強気なコメントも発した。終了後の「試合が楽しかった」という言葉通り、試合中も勝敗を卓越した次元で、ゲームそのものを楽しんでいるように見受けられた。
そして「イメージもよくて、そして地元の京都っていうのも重なって」見事に有言実行のタイトル奪取となった。これを機に再び田中伝説の幕開けも予感させる。
「うーん、そうなったらいいですね。優勝していないと『勝ちたい』が出過ぎるし、今回の優勝で勝ち上がるゲーム勘も取り戻せたと思いますし」
西日本のグランプリは確実に全体のムードがよくなっている。それは前出の川端が、たとえ自分が試合に負けても大会を盛り上げるアクションを出し続けていることも大きいと感じるし、個性と実力を兼備したプレイヤーが大勢いることも起因しているに違いない。
優勝直後、ギャラリーに応える田中
そんな中で撞球職人が魅せた地元V。優勝を決めるゲームボールを沈めた後にキューを高く掲げて拍手に応えた田中。きっと大井直幸や
竹中寛といった個性光る対戦相手とのゲームは、互いにその魅力を引き出しあう関係になりつつあるのだろう。
球のスタイルは変わらずとも、プロプレイヤーとしてライバルたちに刺激され一段と磨かれた田中。
「いいイメージのまま
ジャパンオープンへ行きたいですね」
10年ぶりとなる日本勢タイトル奪還に向けて、最強の布陣が整った。がんばれニッポン!
Akira TAKATA