中野雅之、8年ぶり戴冠に学ぶ〜後編〜
トップアマが全国から集う中、中野は一日を通して抜群の集中力で戦った
一昨日に続いて『全日本アマチュアナインボール選手権』を制した中野雅之(東京)の話を。
妻と2人の子供達との和やかな生活。それらを支えるのが中野の本業。勤務するのはグループ全体を3万人弱の従業員で構成する大手メーカーだ。中野に限らず、いわゆるエリートサラリーマンがトップアマとして名を連ねているのも近年のビリヤード界に見られる傾向と言える。
そんな中野の練習は「週に3日程度」だという。「限られた時間の中で集中すること」が最近の彼が練習に掲げるテーマ。「それが正解なのかはわからないけど」置かれた環境の中で最善を尽くす。最善を尽くすといえば、中野は様々な情報の取捨選択においても貪欲にベストを探っている。
「最近、ウェブで船木さん(耕司プロ=JPBF)が全日本選手権で優勝した後のインタビューを読みました。すると『全日本を目標にして、他の試合を通過点と考えて練習していた』といったことが書いてあったんです」。これを自身に置き換えて、都道府県対抗を主にして他の試合を通過点と考える、つまり1年スパンの行動計画を指針とした。
「また都道府県対抗でMVPを獲った石橋さん(正則アマ・千葉)もサラリーマンなので、調整法などを直接聞いて、それも取り入れました」。その初動には「千葉が優勝したので、来年は東京が勝つためのヒントを探したい」という思いがあったというが、先に個人戦で大きな大きな成果につながった。「無欲の勝利だったと思います」。8年前とは異なる重みを感じさせる。
家族も応援してくれる。「奥さんが『力が入っているよ』とビデオを撮って見せてくれて」、自分のプレーの硬さに気付いた。「落ち着いてビリヤードを楽しんでみたら」って言われ、今回はリラックスして試合に臨んだ。「精一杯やろう。その結果を受け止める」という覚悟も備えていた。
実際、アマナインの決勝日は「内容を覚えていないくらいに」集中していたという。「ミスしたショットは覚えていますけど」とも。決勝戦にいたっては「気が付いたら7-2(リード)」だった。
落合健彦との決勝戦、中野の集中力はピークに達していた