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過去のニュース(2013年)

2013.04.09 プレイヤー

「このタイトルは僕個人のものではない」

Player Pick Up 喜島安広

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喜島は持永隼史との激闘を制し、3年連続で球聖位を防衛


挑戦者の持永隼史に試合開始から3セットを連取され、苦境に立たされた球聖の喜島安広は、第4セットに入る前、「SPA(埼玉ポケットビリヤード連盟)の仲間が作ってくれた横断幕の言葉通りにやるだけです」とだけ語った。

その言葉とは「一球一信」。またその隣には、喜島本人も「用意していたとは知らなかった」という、『メッカ』の常連の手による横断幕が貼られていた。コピーは「不撓不屈」。

喜島がこの2つの言葉を本当の意味で噛み締めたのはこの時だったのではないか。15時開始の第4セットから始まった喜島の大逆襲。間の取り方がそれまでとは変わり、本人の顔からは己への苛立ちが少しずつ消えていったように写った。流れが確実に変わった――。

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10時間に渡る戦いは球聖戦の歴史に残る名勝負だった


しかし、元『名人位』の持永は本当に経験豊かで巧みで、大会前半はどちらが球聖かわからない状態だった。また持永は謙虚だった。「喜島選手は僕より入れる人。このまま行けるとは思っていない」と覚悟してもいた。果たしてその言葉通りになった。

喜島の復活を助けたもの。具体的に言えばそれはやはり彼最大の武器である攻撃力だった。持永も試合後「改めて驚いた」と語る。だが、喜島本人は「僕をあの状態にさせたのは、球聖というタイトルそのものの力であり、仲間の応援。応援があって最後まで頑張れた」と述べた。

「このタイトルは僕個人のものではないんですよ。球聖戦ってそういう試合なんです」

大会前から何度も語っていた言葉だった。筆者も会場で観ていたからこそ、この言葉の真の意味がわかった。仲間から喜島に注がれた想いは目に見えぬ大きなうねりとなって、喜島の四肢を動かしていた。

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所属するメッカ、そしてSPAの大勢の仲間達の気持ちが喜島を支えた


球聖戦の歴史上、4度防衛した選手はいない。過去第2期~4期まで3度防衛した高橋邦彦はその後プロに転向した。喜島は現段階ではプロ入りは考えていない。もし来年も防衛を果たしたら、前人未到の領域に足を踏み入れることになる。

たった1日のための1年間。喜島と仲間の4回目の準備期間が始まった。

T.KOBAYASHI(B.D.)