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過去のニュース(2013年)

2013.04.08 トーナメント

喜島安弘、圧巻の逆転劇で3度目の防衛!

第22期球聖戦・球聖位決定戦

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史上最多タイとなる3度目の防衛を果たした喜島安広


死力を尽くした戦い。戦い終えた2人は揃って目を赤くしていた。

昨日の『球聖位決定戦』におけるトップアマ2名の共演は、単なる当事者間の腕比べではなく、アマチュアスポーツとしてのビリヤードの奥深さと面白さ、そして「ビリヤード人」はキュー一本でここまで人を魅了し、人を動員できるのだという可能性を感じさせてくれたと思う。

挑戦者であり元『名人』である持永隼史と、現球聖・喜島安広は同学年。互いにその力量を認め合い、意識もし合う間柄である。しかし、川崎の『メッカ』で、ナインボールの7ゲーム先取×5セット先取というフォーマットで行われたこの両者の対決は、全く予想し得ない展開を見せた。

第1セットから第3セットまで、持永が巧みにゲームを作り、影を踏ませぬ行き足で3連取。技巧も展開もツキも、欲しいものは全て持永が持っていた。「そうか、今日は持永の日だったのか」と正直、筆者も思っていた。

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立ち上がりから3セットを連取し喜島を追い詰めた


しかし、喜島は溜め込んだフラストレーションを静かに静かに吐き出し始める。第4セットから、持永独特の滑るようなペースには合わせず、少しゆっくり目に丁寧にプレーするようになった。そして、ここから大逆襲が始まった。

「内容には全く納得は行っていないです。でも、『球聖』というタイトルと皆の声援が僕に力をくれた気がします」(喜島)

それまでと打って変わって、ぐいぐいとキューを伸ばし、持永の守備策をことごとく打ち破る喜島。アマチュア最高峰のタイトルを過去2度防衛した男は、やはり恐るべき力を持っていた。会場を慄然とさせる恐るべき攻撃力を。持永のリズムはもはや分断されていた。

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セットを重ねるにつれ、会場の『メッカ』のボルテージは果てしなく上がっていった


喜島は第4セットから第7セットまで4連取し、防衛まであと1セットとする。最終第8セットは、両者のメンタルが透けて見えるような息詰まる死闘だった。柔らかく繊細な技術を持つ持永が、なりふり構わず1点を取りに行く。しかし、喜島は真っ向から受けて立ち、そして凌駕した。

10時間戦い続けた2人のトップアマは、ラストナインがテーブルから消えた時、どちらともなく歩み寄って笑顔で抱擁した。その2人を万雷の拍手が包み込む。恐らく球聖戦史上最高にドラマティックでハイレベルな戦いは、喜島の3度目の防衛成功という結果で幕を下ろした。

  死力を尽くした戦い。これを会場で観られた我々は本当に幸せだった。

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大会終了後の表彰式にて。中央はJAPA(日本アマチュアポケットビリヤード連盟)の中野敏雄理事長


T.KOBAYASHI(B.D.)