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過去のニュース(2013年)

2013.03.05 プレイヤー

オチは作れど試合は落とさず

Player Pick Up  井上浩平

東日本グランプリの会場では小型のラジオが貸し出され、試合会場でFMラジオを通じてプロによる解説を聞くことができるサービスがある。その音声に耳を傾けると、DJのようなセクシーな声の解説と共に、聴衆の笑いを誘う軽快なトークが展開されている。その語り部こそ、井上浩平だ。語り口は本誌の特別付録DVDやビリヤード専門インターネットテレビ『CBNT』でも人気を博す。

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決勝は撞く側に回った井上浩平


2012年、そんな井上の盟友でありビリヤードのプロとして一緒に走り続けて来た塙圭介がグランプリも含めさまざまな大会で4度ファイナルへ勝ち進み、トロフィーも手にする躍進を果たした。その中には井上がいくつか場内解説、CBNTで実況として椅子に座った試合もあった。

そして年は明け、3月2日(日)に行われた2013年初のJPBA公式戦本戦『東日本グランプリ第1戦』のファイナルは井上vs羅立文。この試合のラジオ中継ブースには塙が座る。塙は羅と昨年5度対戦し、2勝3敗。塙の3敗の内2回はファイナルで付けられた黒星だ(関東オープン決勝は塙が勝利)。通算対戦成績だともっと分は悪い。遡ること数時間前、13年初の顔合わせが早くも実現し、僅差で敗れていた。

その羅が同期であり友人であり、切磋琢磨し合ってきた井上の前にファイナルで立ちはだかった。普段、試合を多く語ってきた井上がテーブルに付き、昨年は決勝戦を最も多く語られた内の1人である塙がマイクの前に座る。なんとも不思議な構図だ。

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井上の試合の解説席に付く塙


塙本人も中継の途中で断わりを入れたが、その口から出る話は明らかに深い交友関係にある井上の立場、目線から発せられたものだった。試合映像と共にその音声は『Ustream』にて配信されていたため、その言葉を聞いていた人も多いことだろう。それはもはや解説・塙圭介ではなく、友人代表・塙圭介と言ってもよかったかもしれない。

既報の通り、劇的な展開のもとに試合は井上の初タイトル獲得で決着。羅との握手を済ませた井上が最初に目線を送った先は、決勝テーブルから離れた場所に陣取られたラジオブースの方向だった。

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試合後、羅は井上の戴冠を笑顔と共に讃えた


決勝直後に行われた閉会式の後に話を聞いた井上は、解説・MCなどで聞き馴染みのあるイメージに戻っていた。以下は、その時の井上本人が語った言葉だ。

--優勝した今の気持ちは?
「優勝したら泣いたりするんだろうなと思ってたんだですけど、正直に言って『訳がわからない』って心境ですね。優勝まで9年ぐらい掛かりました。長かったですね」

--一番辛かった試合、優勝を意識し始めのはどのあたり?
「最後の最後まで、優勝できるなんて思いませんでした。辛かったのは酒井大輔選手戦です。早い時間とか最初の試合って僕ダメなんですよ。あそこが一番辛かったですね。」

--塙プロが解説席で自分のことかのように試合について語っていましたが?
「塙プロとはずっと一緒に闘ってきた間柄だから、僕の試合への思い入れが強かったんだと思います。ありがたいですね。今日はこれから飲み行きたいと思います(笑)」

--塙プロや他の解説のプロが「彼は練習嫌いで一人だと15分ぐらいしか練習できない。なのにあんなに撞けるのは天才肌なんでしょうね」と語っていました
「いやー、ホントに練習が苦手なんですよね。天才でよかったです(笑)。これからもデカいこと言い続けますよ(笑)」

--では次は大会連覇ですね
「まず1回戦(※)は勝ちたいと思います(笑)」

最後にはオチも用意されていた。

去り際、プロ仲間と談笑し帰り支度を済ませた井上は「スーパースターはそろそろ帰りま〜す!」と大会関係者各位に挨拶を済ませ、「デキシークラブ船橋店」を後にした。

※井上は優勝シードのため、第2戦は予選免除で本戦からスタート