Player Pick Up 井上浩平
東日本グランプリの会場では小型のラジオが貸し出され、試合会場でFMラジオを通じてプロによる解説を聞くことができるサービスがある。その音声に耳を傾けると、DJのようなセクシーな声の解説と共に、聴衆の笑いを誘う軽快なトークが展開されている。その語り部こそ、井上浩平だ。語り口は本誌の特別付録DVDやビリヤード専門インターネットテレビ『CBNT』でも人気を博す。
決勝は撞く側に回った井上浩平
2012年、そんな井上の盟友でありビリヤードのプロとして一緒に走り続けて来た塙圭介がグランプリも含めさまざまな大会で4度ファイナルへ勝ち進み、トロフィーも手にする躍進を果たした。その中には井上がいくつか場内解説、CBNTで実況として椅子に座った試合もあった。
そして年は明け、3月2日(日)に行われた2013年初のJPBA公式戦本戦『東日本グランプリ第1戦』のファイナルは井上vs羅立文。この試合のラジオ中継ブースには塙が座る。塙は羅と昨年5度対戦し、2勝3敗。塙の3敗の内2回はファイナルで付けられた黒星だ(関東オープン決勝は塙が勝利)。通算対戦成績だともっと分は悪い。遡ること数時間前、13年初の顔合わせが早くも実現し、僅差で敗れていた。
その羅が同期であり友人であり、切磋琢磨し合ってきた井上の前にファイナルで立ちはだかった。普段、試合を多く語ってきた井上がテーブルに付き、昨年は決勝戦を最も多く語られた内の1人である塙がマイクの前に座る。なんとも不思議な構図だ。
井上の試合の解説席に付く塙
塙本人も中継の途中で断わりを入れたが、その口から出る話は明らかに深い交友関係にある井上の立場、目線から発せられたものだった。試合映像と共にその音声は『Ustream』にて配信されていたため、その言葉を聞いていた人も多いことだろう。それはもはや解説・塙圭介ではなく、友人代表・塙圭介と言ってもよかったかもしれない。
既報の通り、劇的な展開のもとに試合は井上の初タイトル獲得で決着。羅との握手を済ませた井上が最初に目線を送った先は、決勝テーブルから離れた場所に陣取られたラジオブースの方向だった。
試合後、羅は井上の戴冠を笑顔と共に讃えた