Player Pick up 藤井寛美
国内女子ポケットの開幕は今月末に大阪で開催される『関西ナインボールレディースオープン』だ(男子の『関西オープンと併催)。今シーズンが始まる前に、今日は女子プレイヤーの中から注目の選手を紹介してみたい。
アベレージの高さは実力の底上げの証。藤井寛美、今シーズンはいよいよタイトル奪取に挑む
昨年は東日本の木村真紀が、国内女子公式戦では実に野内麻聖美以来、4年ぶりとなる初優勝を飾った。次の候補を挙げるとすれば誰なのか? 過去にオープン戦で4度のファイナル進出を果たしている藤原和子が「いつタイトルを獲ってもおかしくない」状況にあることを踏まえた上で、富山県を舞台に活動している藤井寛美が、既に八分咲きの状態にあるとみている。
気づいている人もいると思うが、藤井が昨シーズンに残したアベレージは、まさしく特筆に値するもの。ファイナル進出こそなかったものの、公式戦全10戦中、ベスト8進出が6回で、これは上位陣の河原千尋や夕川景子と並ぶ"トッププロ"水準の数字だ。
藤井は2006年に『全日本アマチュアナインボール選手権大会(通称:アマナイン)』を、2007年には『全国アマチュアビリヤード都道府県選手権大会(通称:プレ国体)』を制して、2008年に大型ルーキーとしてプロデビューを果たした。そして地元の山口県を離れ、活動拠点を富山県に遷して現在へと至る。
以後、5年間の日本ランキングは21位、14位、17位、14位ときて、昨年ついに8位につけてトップテン入りを叶えることとなった。これについて本人は「(自分より上位の)栗林美幸プロ、光岡純子プロが産休で出られていなかったので」と分析をしつつ「アベレージが上がったことは良かった」と振り返る。
大舞台での準決勝進出は大きく経験値を高めたに違いない。この面々を連破することが優勝の条件だ
さらに「準決勝を2回撞くことができたので、その経験を生かして、今年は内容のアベレージを上げていきたい」と一層の意欲を見せる。何より昨年は「優勝する! っていう気持ちで試合に臨めるようになった」ことも収穫だった様子。
もちろん高いアベレージには裏付けがあり、「3年ほど前にブレイクのミスキューをきっかけにイップスのような状態になり苦しんだ」時には、同じ『(株)ジャストドゥイット』に所属する栗林達、そして美幸夫人からアドバイスをもらって立ち直った。他にも「たくさんの人に支えられて前を向いて歩いていけています。本当に感謝です」という気持ちで仕事に練習に励む日々だ。
日々の真摯な姿勢を先輩たちもあたたかく見守る。ブレイクもアドバイスを得て成長を遂げた
そんな栗林夫妻も藤井の日々の頑張りを感じて、遠い東京から見守り応援している「もっと自信が持てたら更に強くなる」「(他者の)試合を観る眼も培っている」と自分たちが歩んできた道を突き進む藤井にあたたかいエールを贈る。
初優勝を果たすには、およそ優勝候補とされる面々を相手に3連勝することが条件となる。その頂は苦難を乗り越えることでした辿り着けないが、だからこそ絶景であり、誇らしく咲いて賞賛されるのだ。ベスト8進出率で5割を超えることは、その準備が大き整ったシグナルとも受け取れる。
「今年は一度初心に戻り、ガンガン向かっていく気持ちで試合にのぞみたいです」。プロ6年目の藤井はチャレンジャー・スピリッツを携えて、来週開幕戦が開かれる大阪の地へ乗り込む。北陸の地で一足早い開花情報。どの地で満開となるのか、注目していきたい。
Akira TAKATA