吸収力を高めてみませんか?
先にお伝えした『藤本コーチプロジェクト』の記事の取材・執筆・撮影を担当した西日本取材班の高田です。新しい試みに興味を持っていただいた方々から、さっそく様々な反響をいただきました。今日は取材現場で感じたことと、その後に各所で交わした会話で得た情報などから、まとめて記してみたいと思います。
鋭い眼差しで櫻井プロのプレーを見守る藤本氏。「僕もコーチングを学ぶ」という姿勢でいる
ビリヤードに限らず趣味を楽しむには、上達や結果にとらわれ過ぎることは好ましくありません。むしろマイペースで持続させる姿勢こそ『継続は力なり』であり、楽しくて始めた趣味でストレスを感じることなど正に『本末転倒』というものです。
ですが「昨日より球が入る」ことはビリヤードを楽しくさせてくれますし、そのために教わる機会はあった方がよいと考えます。これは取材を通じて確信に変わりました。
藤本共史さんのプロジェクトはまだスタートしたばかりですが、「まず相手の声に耳を傾ける」姿勢や「客観的に問題点を抽出して、具体的な対応策(のヒント)に示す」手順や技法には、すでに自主的に『コーチング』の基本を学んでいたことが随所に窺えました。
さらにその内容には、隣で聞いていただけでも「今度、試してみよう」と思わされるような、素早く効果が表れそうな"コツ"が多く織り交ぜられていました。役得ですね。
ただし、CUE'Sのレッスンページなどの取材時には、ほぼ毎回のように監修を務めるプロから『目から鱗』な話をいただいていて、時には「本当は教えたくないんだけど」という『極秘ネタ』をリリースしている場合もあります。
ですから、実はプロ選手の中にも「何か新しいヒントはないか?」と隈なく読んでいただける方がいるくらい、価値の高いヒントも隠されていたりします。レッスンに時間を割いて協力してくださるプロの方々にはこの場を借りて御礼を申し上げる次第です。
思えば大井直幸プロもズバ抜けた『吸収力』で躍り出た人。それは世界を狙う今も変わっていない
ここで話は変わりますが、私達は量や質に差異はあっても、ビリヤードに関する知識や技術を持っています。特に自分より経験の浅い人のプレーを見ると、何が不足しているのか容易にわかることが多いでしょう。
試合観戦をしている時には、その対象が自分よりはるかにレベルの高いプレーヤーであっても、ミスジャッジやミスの原因に気付くこともあるでしょう。それほど客観的な目線には判断力があり、「傍目八目」とはよく言ったものだと感心します。
反対に自分より上手な人の「上手さ」というのは把握しづらいもの。さらに自分のプレーよりも人のプレーが客観的に見られるという点は先に記した通りです。
すると、自分より経験も技術もある人からのアドバイスは聞き入れて損はないに違いないのですが、その際に自分が否定された気分になったり、今の自分に必要なことは異なることだと思い込んだり、受け手、つまり自分自身がチャンスを遠ざけてしまうことも少なくありません。
実のところを明かしますと、私自身がそのタイプで遠回りをしていて、今回の取材を通じて強く反省をした次第です。また寄せられた意見も不思議なまでに『遠回りする事例』が多く、これまで日本のビリヤード界においてコーチングが定着しなかった原因に通じる話ばかりでした。
そこには『教え魔』の存在があったり『教える側の不手際』も確かに存在するのですが、理想のコーチの出現を白馬の王子様さながらに待つよりは、今近くにいる人から貪欲に我武者羅に吸収した方が上達への近道だと。それはストロークのコツからポジションの考え方にいたるまで、多岐にわたって上達のヒントが溢れていることでしょう。
この人達にも皆コーチがいる。もちろん陰で衝突や葛藤を乗り越えたに違いない
思えばコーチ制度がなくとも突き抜けてきた人が大勢いて、そうした名選手達は直接的なアドバイスも間接的なヒントも人一倍吸収して練習につなげてきた結果でそこまで登りつめた人達。この『吸収力』というのはビリヤードの上達において最重要のポイントかもしれません。
「この人だ!」と思う人がいたら、今日にでもワンポイント・アドバイスを求めてみてはいかがでしょう? 趣味とはいえ、やはり上達を感じると楽しさは何倍にも跳ね上がるものですから。
もちろん乞われていない助言は控えるのが粋でしょうし、コーチングはプレイヤーからのリクエストによって成立するものだと考えています。そう言えばつい最近、とあるトッププロが「その撞き方は自分にはできない」と、ランキングで下位にいるプロの球を見て感心していた、という話を聞きました。なるほど、その域にして吸収を続けられるからこその地位なのかもしれません。
続けていればビリヤードは必ず上達します。でも、ちょっとその気になった時にはグーンと伸びる時。身近なコーチを頼ってみたり、CUE'S連載から書籍化された『スキルアップブック』などを読んでいただければ、きっと近道となることでしょう。助言や情報を取り入れて負の要素はなし。あらためてそう思わされる取材でした。
ウェブキューズをお読みいただいているすべての方に感謝の気持ちを込めて。レッツ! 吸収力アップ!
(Akira TAKATA)