2012プレーバックJPBF(スリークッション)
7度目の年間ランキングMVPを受賞した梅田
日本スリークッション史における今の「梅田時代」はしばらく続きそうだ。
今年度の最終ランキングはMVPの梅田竜二以下、2位・新井達雄、3位・界敦康、4位・竹島欧、5位・小野寺健容と続く。これまで梅田のMVP受賞は'05年~'07年と'09年~'11年の6度。今年で実に7度目の受賞となった('08年のMVPは船木耕司)。
今年の梅田は『全日本選手権』『ジャパンカップ』『アダム杯全日本プロ選手権』の3大タイトルこそ獲得できなかったが(ジャパンカップの準優勝が最高)、『東京オープン』『ニッカオープン』『全関東』で優勝。年度末の『アダム杯プロ選手権』の前にすでにMVPを内定させてしまうほどポイントを稼いでいた。
「正直言えば、練習時間は満足行くほど取れていなかったシーズン。でも、精神面はアップしたと思います。特に大会運営に携わって物事の判断力がついた。それは自分のプレーにもいい効果をもたらしてくれました」
年の瀬にこう語った梅田。ここで言う『大会運営』とは11月の『スリークッション女子世界選手権』のこと。大会実行委員長を務めた梅田を始め、各委員、スタッフ、ボランティア達の尽力の甲斐あって、「国内で初めての、女子の世界選手権」を成功裡に終えることができたのは記憶に新しい。
日本初開催の『女子世界選手権』で初優勝。新女王となった東内
順序が前後するが、この女子世界選手権は無論、国内ビリヤード史に未来永劫刻まれる最重要イベントの一つである。素晴らしい舞台・環境であったことはもちろんだが、新女王に輝いた
東内那津未らの日本女子選手達が、「女子キャロム大国」の名に恥じないプレーを見せて表彰台(優勝~3位タイ)を独占したことはこれからも語り継がれていくに違いない。
『世界選手権』の表彰台は日本勢が独占した
さて、男子シーンに話を戻すと、今年は「若手達が梅田の地位を今以上に脅かすも届かず」という印象の1年だった(若手といっても30代だが)。特にシーズン初戦、1月の『全日本選手権』の上位4名は、竹島、界、船木、
田名部徳之と、30代3名、40代1名の「誰が勝っても初優勝」という面々で、世代交代を予感させるものだった。
竹島の久しぶりの公式戦Vは『全日本選手権』だった。大会初制覇
全日本を初制覇した竹島はその後、世界を転戦。『アジア選手権』で準V、『世界選手権』で5位タイと上昇気流に乗った。全日本のファイナルで竹島に破れた界はその後、国内で準V2回、3位2回とこちらも上位入賞を繰り返した。
準V3回、3位2回という好成績でシーズンを終えた界。11月の『東日本マスターズ』にて
とはいっても、最終的にこの両名は梅田を凌駕するには至らず、さらに年度末ギリギリのところで50代のベテラン、新井が年間ランキング2位に飛び込んできたこともあり、3位・界、4位・竹島という結果に落ち着いた。
シーズン最終戦『アダム杯プロ選手権』を制した新井
冒頭の所感、「梅田時代が続きそう」というのは、そんな若手達の活躍もさることながら、梅田の「崩れなさ」を筆者は今年も度々目撃したからでもある。結局のところ、若手の勢いが良かった、ベテランが往年のキレを見せた、というのは瞬間ごとに切り取れば毎年・毎試合そうであって、その都度それを抑えこんだり、負けるにしても強い負け方を見せたり、年間トータルで活躍したりと、梅田が横綱相撲を取っていたように写るのだ。つまり、安定した強さがある。
ただ、そんな日本のエースの座にある梅田でさえも、'07年『世界選手権』優勝以来、国際戦での結果は芳しくはない。竹島、界に代表される若手達がどれだけ国内で勝ち、海外遠征の数――すなわち個の力、ひいては日本全体の実力を底上げするチャンス――を増やせるか。2013年の日本スリークッション戦線の、見所の一つはそこにあると言えるだろう。
〈T.KOBAYASHI(B.D.)〉