2012プレーバックJPBA女子
JPBA女子の2012年シーズンを振り返ると、まず最初に梶谷景美の日本ランキング1位返り咲きを紹介せねばならないだろう。『ジャパンオープン』(6月)ではファイナルで河原千尋を直接下しての優勝。
そして河原と僅差で激しくポイントを競り合いながら迎えた最終戦(『全日本選手権』・11月)で5位タイにつけて女王の座奪還に成功した。ともに長くて苦しくも充実したシーズンだっただろう。
梶谷、ランキング首位奪還
ただし我々ウォッチャーの目からすると、梶谷はランキング1位を明け渡していた期間に更に強くなった印象で、過去2年にわたって1位の座に就いた河原もトップを走るランナー特有の重圧を背負って戦う中で大きくステップアップを遂げた感があり、来シーズンもこの2人が首位争いを繰り広げることはほぼ間違いないと見ている。また、今シーズンはこの抜き出た2人の後ろで注目されるべき動きも少なくなかった。
河原が来季も首位戦線を争うことは確実だろう
昨年4位の福家美幸と同6位の光岡純子が出産育児のため戦線から離脱した今年。久しぶりにトップスリー入りは果たした曽根恭子と続く夕川景子も、女王の椅子に指先が触れている印象を受ける。
夕川の安定した戦績はここ数年変わらないものだが技術的な向上にともないプレースタイルに変化が見受けられ、曽根にいたっては完全に「戻ってきた」様子で、その安定感は来期の更なる飛躍も予感させる。
これは5位の李佳もしかりで、日々の成長を続けなければ上位に食い込めない、そんな厳しい戦線の中で個々に階段を上り続けているのが、今年の上位陣から強く感じられた点。
曽根は世界でも結果を残した
そして6位の木村真紀は初優勝(『全日本女子プロツアー第2戦』・10月)を遂げるなど力強く自身の殻を破り続ける躍進で、さしずめ『木村イヤー』だったかもしれない。そんな木村は来年のテーマとして『挑戦』を掲げるという。そして今年は7位と順位を落とした大井由希子だが、『関西オープン』(4月)と『北陸オープン』(10月)で準優勝と、実力を示していたといえる。それも2回とも夫婦揃ってファイナル進出というオマケ付きで。
さらに8位には初優勝こそ叶わなかったがアベレージの上昇著しい藤井寛美、同じく久保田知子、新保まり子といずれもベスト16入りが既にノルマであろう戦績を持つ面々がトップテンを占め、このメンバーが今年1年だけを見ても相当な練習を積んできたことが窺えた。
大きな躍進を遂げた木村
間違いなく全体のレベルが上がっている。だからこそ梶谷の1位返り咲きには大きな意味があり、河原が2年前より戦闘力を下げたということは絶対にない。男子と同様に層の厚い台湾勢、そして中国の選手が世界の舞台で活躍を続け世界をリードする現状下では評価されにくいが、日本女子は着実に勢力を増しており、曽根が今年の両世界選手権(ナインボール・6月、テンボール・8月)でどちらも9位タイに入った戦績からも、それは証明されたと言えるだろう。
この『世界でベスト16』に入る可能性を有するプレイヤーは、日本国内で増え続けている。逆に国内でトップ10に入ることの難易度が年々上がり続けているのも実情。良い意味で国内女子戦線が真の戦国時代に突入した時。それが今年だったのではないだろうか。今年トップテン入りを果たせなかったメンバーの中にも、漲る意欲を感じさせてくれるプレイヤーは少なくない。
崩れることのない2人の女王とそこへ攻め入るべく激しく燃え上がる選手が形成するトップグループ。これがここ数年で築き上げられた国内女子の勢力図で、今年はより変化が起こった1年だった。ここに前出の福家と光岡が戻ってきたなら、その競争はさらに激化するに違いない。
そして少し気が早いが、来シーズンはその勢力図がどのように変化を見せるのか、ぜひ注目していただきたい。