第45回全日本選手権大会
並み居る強豪を退け優勝を果たした張榮麟
11月18日(日)に閉幕したポケットビリヤード日本最大の大会『第45回全日本選手権大会』は、前項の通り男女ともに台湾の張榮麟と周婕妤が優勝した。
両選手とも共通して、卓越したスキルと驚異の集中力をもって長きにわたるトーナメントを勝ち抜いたのだが、大会を取材するにあたり、2人には決定的な違いがあった。
周婕妤の決勝のパフォーマンスは圧倒的だった
周は女性らしい端正なルックスや試合中の表情、仕草、動き、ファッションなどさまざまな面で写真の撮り甲斐のある選手なのだが、張榮麟に関してはその真逆の印象を持った。さまざまなアングルから撮影し、できる限りの努力はするが、それでも被写体としてはつまらないのである。
張には上背があるため四肢も長く、その恩恵を受け、撞きづらい態勢を強いられることが少ないのも事実だが、それにしても撮影した写真を見比べると、表情、構え、テーブル上の位置、全てが似たような構図になってしまう。デジャブの繰り返しだ。それは逆に言えば、常に意中の場所、撞きやすい場所に手球をポジションしているからとも表現できる。
選手たるもの試合中に集中するのは当たり前のことだが、張榮麟に関しては端から見てもその集中が見てわかる選手と言ってもいいだろう。だからこそ、決勝でミスキューの後に頬を叩いて見せたパフォーマンスは意外だった。そして、ギャラリーの反応に対して自らも笑ったのである。
張榮麟、笑顔の瞬間
この行為が決勝でのパフォーマンスに好影響を与えたかはわからない。ただ、緊迫の決勝でのその余裕、笑いに変えてしまおうという発想。技術論は全く介在しないが、それは強いはずである。
一つ言えることは、あの笑顔は表彰式でトロフィーを持ってカメラの前に立った時よりはいい表情だったということだ。