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過去のニュース(2012年)

2012.10.16 その他

ビリヤードとともに歩む道。千差万別の球ライフ

第10回全国シルバースタカップ取材後記

10月13日〜14日(土・日)の両日に大阪で開催された『第10回全国シルバースタカップ』はスムーズに進行し、今年も笑顔の表彰式で幕を下ろした(結果はこちらで紹介)。会場では141名が141のドラマを演じたことになるのだが、それは141通りの生き方の中にある1ページに過ぎないのかもしれない。でも、それぞれがビリヤードを何らかの支えにしている。そう感じた視点から。

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決勝日に進出を果たした16人の実力者たち。キャリアや職業などは様々だ


今回、優勝した酒井貴裕選手は歴2年半にして既にA級でも十分に戦えるであろう実力の持ち主。神戸の『Back Alley』をホームに練習を重ねていて、決勝日にはお店のオーナーも応援に駆けつけ、温かく見守られる中で恩返しの優勝を果たした。豪快でスピーディーなプレーは、Aクラスへ進級した後も早々に活躍が期待される逸材だ。

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優勝した酒井貴裕選手。日本のアマチュア界で名を馳せる存在へ成長を予感させる


また決勝戦で惜しくも敗れた中尾理恵選手(奈良・RISE)もまた非常に高いスキルを有する選手。クレバーな組み立てでサクサクと取り切る安定感はオープン戦などでも通用するであろう域にあり、近年のアマチュア女子級の高いレベルを示した格好となった。

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昨今の女子級の上手さと強さを見せ付けた準優勝の中尾理恵選手


そして今大会には現役で活躍するプロアマ選手のジュニアたちも出場。その中から2人をピックアップして紹介しよう。

高校3年の早川大樹選手(滋賀・SOUL WOOD)は滋賀県のアマチュアポケットビリヤード界の主将的存在である早川疏氏の長男。昨年末に同氏がお店を新たにオープンしたのを機にキューを握り、キャリアは1年弱ながらメキメキと頭角を現している。

小学校から高校まで水泳選手として活躍し、来春からは管理栄養士になるため専門学校へ通い、「アスリートの食をサポートする仕事に就きたい」という夢を叶えようとしている。

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早川大樹選手(高3)は管理栄養士という仕事を目指している


今回の最年少出場者は小6の松田舞選手(兵庫・DAIKAI)。彼女は小1の時からキューを握っており、
美しいフォームと高いシュート力で会場中の注目を集めた。

父は兵庫ローテーションクラブの主力格である創一氏。母は現役活躍中の翼プロで、本大会の第1回大会の優勝者でもある。「初めての試合で緊張しました」と爽やかにコメントした後は会場の片隅で「火曜日に返さなきゃいけないから」と学校の図書館で借りた本を開いて熱心に読書。将来の話を聞けば「地元の大学へ進んで学校の先生になりたいです」とも。

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今回の最年少出場者、松田舞選手(小6)。「将来は学校の先生になりたいです」


A級への登竜門として知られる本大会。エントリーした141名は誰もがビリヤードを愛している。しかしキャリアや練習環境は異なるし年齢や職業だってまちまち。ここで会場の和やかなムードに触れ、試合後に対戦相手と積極的にコミュニケーションを取る姿を見るにつれ、ビリヤードが自分のペースで付き合える息の長い趣味であることに気付かされた。

ここにいた選手、そして全国の愛好家は誰もがキューを握ることで各々が何かを見出して、人生に幅をもたせているのだと感じる。上達は醍醐味、緊張感も楽しみ。趣味の世界で形式にとらわれる必要はないだろう。大切なのは自分流で楽しむこと。ビリヤードと関わることが人生とびきりのスパイスなのだから。