Player Pick up 木村真紀
木村真紀が遂に『突き抜けた』。
プロ公式戦初優勝を飾った木村真紀
'08年の『セントラルレディースオープン』で野内麻聖美が名乗りを上げて以来、実に4年ぶりとなる
"プロ公式戦初優勝"という快挙を遂げた。木村は8月の『女子テンボール世界選手権(WWTBC)』では自身初のステージ1通過を果たし、世界の強豪ひしめくステージ2もクリアして9位タイという立派な足跡を
残してきた。それを十分な"予兆"と捉えてはいたが、帰国後3戦目で達成するとは見事としか言いようがない。
そんな木村がプロとして初めて公式戦で決勝戦へ進出したのは今から5年前の『北陸オープン』だった。
当時から「よく頑張っている選手」という評を耳にした。実際、数ヶ月ごとに試合会場で見ると、明らかに上達が感じられる。つまり、それだけ日々の努力を重ねていたに違いない。
だが、'09年の『九州レディースオープン』で、'11年にも『全日本女子プロツアー』で決勝戦に進むものの、梶谷、大井由希子という壁の前に悲願は砕け散った。
この3度の敗退について、個人的には彼女が選手として持つ"運"だと見ている。『決勝戦へ進める運』と『そこで敗れる運』は本格化の前段階で高い効果を感じられるからだ。
決勝戦へ進めた自信と最後の最後で敗れる最大の悔しさ。両方を翌日からの練習に糧として生かせるのは資質。それに当てはまる木村は間違いなく良い運を持っていた。もちろん引き込んだのは自身の努力に他ならない。
そして今回。第1戦優勝の
曽根恭子、ランキング1位の
河原千尋を下した
高木真樹子を続けて倒して、
4度目のファイナルチケットを手に入れた。相手は女王。しかも準決勝では最高の仕上がりを見せていた。
正直、「木村は突き抜けるための運を持っている」とまだ思っていた。つまり初優勝の先延ばしを予想した。
『優勝候補と呼ばれるメンバーを相手に3連勝する可能性』イコール『優勝の可能性』。これが現在の国内女子のバロメーターで、4年にわたって『突き抜ける』者は出てこなかった。それほど壁は厚く、勢いやフロックで優勝できる可能性はゼロに等しい。今回の試合でも格段の成長を見せるプロが何人もいた。それでも決勝戦への切符は手に入らないのだ。
木村、プロ公式戦初優勝の瞬間
そして木村は勝った。それは周囲の想像以上にWWTBC以降、一層の努力を重ねた証であり、日頃から厳しい姿勢でテーブルに向かってきたことを明らかにした瞬間でもあった。
ファイナルを戦った女王・梶谷も木村の勝利を祝福した
「嬉しさのあまり、(対戦相手の)梶谷さんに抱きついちゃいました(笑)」。おそらく梶谷もまた木村の
努力を感じて応援してきた1人だったに違いない。彼女は大きな手で優しく木村を包み込んだ。
木村の優勝は他の未勝利組に火を点けたに違いない。優勝候補組もまたランキングと賞金を死守すべく、
今後の対木村戦では一段と集中力を高めてくるだろう。
一つの大きな壁を打ち破った木村。今後の戦いはますます目が離せない
そして「顔がほころんで止まらない」優勝の快感を味わった木村は、さらにスキルを磨き上げること必至。
国内女子戦線活性への起爆剤登場を喜びつつ、木村が後輩の初優勝を笑顔で包む姿を思い描いてみる秋。