Player Pick Up 塙圭介
プレーはシャープで、顔はイケメン、物腰は柔和。しかし、負けた直後のアツがりぶりは尋常ではない。唇がわななき、全く言葉が出てこなくなる。
'04年、プロ入りした年の『全日本選手権』で敗れた直後だっただろうか。筆者はそこで初めてケイスケの本性を知った。もちろん誰だって負ければアツい。でも、ケイスケは群を抜いていた。それ以来、敗戦直後に近付かない人No.1であった。
関東オープン初制覇。そして6年ぶりの公式戦優勝を遂げた塙圭介
「僕の性格なんです。入れ込み過ぎて力んで負ける。それを散々繰り返した。最近です、身の丈を知り、敗戦を受け入れられるようになったのは」
ここのところ上位進出が続いているのは、まずは精神状態が良化の一途を辿っているからだ。一言で言えばオープンになった。何しろ近頃は筆者がカメラを向けると即座にポーズを取る人No.1である。毎度驚いている。
練習量も増やした。「もう34歳ですから。やらないと」と笑う。
「赤狩山幸男プロが世界を獲ったこと、ものすごく影響ありますよ。『俺、サボってたな』って。年明けにおばあちゃんが亡くなったことも大きい。僕、おばあちゃん子だったから。今年は本気で頑張るぞって」
その想いは今年3度の準優勝として実を結ぶ。この内2回は羅立文に負けた。『全日本14-1』では羅が1イニング目で100点を撞き切り、壮絶すぎるというかもはやネタになる負けっぷり。その時も筆者はやはり敗戦直後に声を掛けるのは避けたが、表彰式でのケイスケはとっくに笑顔だった。
「強くなれたのは羅の存在も大きい。同い年なんですよ。この前初めて『GP』で勝てて今回も勝って、これで2勝7敗ぐらい?(笑) 普段は親交ないけど、試合でたくさん勉強させてもらいました。相手はトッププロだから僕もチャレンジャーの姿勢......っていうより無欲で向かって行けます。それに今年決勝戦は4回目ですからね(笑)。雰囲気に呑まれるってことはなかったです」
今年4度目の対戦となった塙vs羅立文。これで2勝2敗
そう、全くもって平常心だった。一昨日の関東オープンのファイナル、最終ゲームの取り切り。10番ボールにポジションした時に気の早いギャラリーが声を上げた。何しろ6年ぶりの優勝が目前だ。しかし、ケイスケは「まだ早い」と笑顔でいなし、遠い手球を撞くためにキューにエクステンションを装着してから、焦らずにゲームボールを沈めた。
「最高の瞬間でした。6年分の想いを溜め込んでいましたから」
最近のケイスケは自虐ネタも公の場で言う。
「嬉しかったですね。自分にしちゃあ内容も良かったんで(笑)」
〈T.KOBAYASHI(BD)〉
この試合の模様は、9月14日(木)よりビリヤード Web TV『CBNT』で配信開始。また、塙圭介プロ本人による解説付きDVDとして、10月4日発売のCUE'S11月号でもお楽しみ頂けます。