Player Pick Up 梅田竜二
意外なことに、梅田は今回初めて『スリークッションジャパンカップ』のファイナルを撞いた。これまで何度も3位止まりだった。
ジャパンカップ準優勝は梅田にとって過去最高成績だ
「9キューで18-17と金京律を逆転した時に、『入れてはいけない一息』を入れてしまって、ほんの少し緩い気持ちのまま撞いてしまった。あの外し方が最後まで尾を引きましたね」
その後、梅田の得点はゼロ。これまで金との戦績は三分七分で金優勢。その力関係を変える最高の舞台だったが、叶わなかった。それでもセミ・ファイナルで李忠馥を止め、韓国勢同士のファイナルは阻止したのだから、日本のエースとして最低限の責務は果たしたと言えるだろう。
「正直、自分のプレーだけの満足度は40%。でも、収穫のある戦いで準優勝しましたし、良い流れのまま韓国・スウォンでの『ワールドカップ』に向かえるという意味では70%かな」
40%というのは厳しい採点だが、致し方ない。「日本スリークッションの顔」である梅田は、特に世界チャンピオンになった'07年以降、JPBF執行部の仕事(例えば『世界女子スリークッション選手権』の準備など)を始め、替えの効かない立場で忙しい日々を送っている。出られる国際大会には全て出ているが、満足行く練習量は確保できていない。
「それを嘆いても仕方ないですから。でも、今回は『外国勢に負けないぞ』と気合いが入っていました」
日本のエースにふさわしい活躍を見せた梅田竜二
セミ・ファイナルの李戦はまさに気で圧した試合だった。梅田曰く、「究極のところ、ビリヤードは『気合い』が『技術』を凌駕する」。それを方便とは思わせないほどキュー出しと眼光は鋭かった。12キュー・30-17。胸のすくようなゲーム。梅田の現況を知る身としては「よくぞ」という言葉が出かかる。しかし、梅田はその気配を読んでやんわりと牽制してきた。
「『梅田は弱ってた』って思われるようなことは書かないで下さいよ(笑)」
43歳、全力でプレイヤー。男は独りで意地を張る。
〈T.KOBAYASHI(B.D.)〉