Player Pick Up 鈴木清司
8月26日に行われた『東日本グランプリ第6戦』を制したのは、鈴木清司だった。
ヒルヒルのファイナルを制した鈴木清司は「辛かった」と心境を明かした
表彰式を終えた後の鈴木に話を聞くと、第一声は「辛かったです」という言葉だった。なぜ、鈴木は「辛かった」のか。試合後の言葉から、その意味を解き明かしてみよう。
照屋との決勝(8-7)や、慎重な展開を強いられた土方隼斗との準決勝だけじゃなく、全体を振り返って「辛かった」という答えには少し驚かされた。スコアだけ見ると鈴木はベスト16で虻川修に8-3、ベスト8で鈴木淳に8-2と快勝していたからだ。
その理由はブレイクの出来に関係していたようで「今日のベスト8と準決勝では思うようなブレイクができなかった」とその口からは自身のパフォーマンスに対する反省点が聞かれる。----個人的な及第点に及ばなかったことが精神的な疲れになったのか。
確かに、決勝も序盤はブレイクが冴え渡る充実の内容だった。しかし、徐々に乱れが生じ、ヒルヒルまで持ち込まれていた。「ブレイクの善し悪しで大きく変わってきてしまいますからね。決勝後半も8-3で決められたところを決めきれなかった時に、これは巻き返されるな、と感じました。あそこで一気に流れが変わりましたね」と語る。
悪い流れになったことを的確に説明する様子からは、厳しい場面に立たされながらも冷静さを保つように努めていたことが伺い知れた。ここに「辛かった」原因の1つが垣間見れる。
真剣な面持ちでターンを待つ
優勝を意識した瞬間について「最後のゲームの最後のボールまで、意識することはありませんでした。それぞれの試合に集中するだけでした。最後の10番も普段の3倍ぐらいの距離に感じましたね(笑)」と、余計なことは考えずに試合に取り組んだ結果が優勝だったと話す。緊張の糸を切らさなかった、これも鈴木が「辛かった」と話した原因の1つだったのだろう。
さらに、所属するビリヤード場の仲間には「優勝して帰ってくるから」と優勝宣言をしてきたという鈴木。それは決勝日まで残った際には、必ず言うようにしている言葉らしい。
出場する以上、プロとして優勝を目指すのは当たり前だが、その言葉の目的は、一人でも多くの人に試合を見てほしいという気持ち半分、自分にプレッシャーを掛けるためが半分だと説明する。
優勝するためにあえて自分を精神的に追い込む。試合中に見せる表情にもその心中が現れていた。そして、これもまた鈴木を「辛く」させた一因だったはずだ。
試合中の表情が、背景を物語る
ほかにも、さまざまな要素が絡み合ったが故に、鈴木は「辛かった」のだろう。その言葉から、改めて優勝することの大変さを知ることができた。
自分自身の試合までの高め方、当日の入り方などは個人差があるものだろうが、優勝のために各プロ達が自らを律して試合に臨んでいることに敬意を表したい。
最後に「辛かった」と語った鈴木の表情には、笑顔がこぼれていたことを追記しておく。
この試合の全容は9月5日(水)に、ビリヤードWeb TV『CBNT』にて配信予定。