Player Pick up 肥田緒里恵&西本優子
2日間で25点ゲームを9回。さらにドーピング検査で1時間以上拘束。やっと夕食の席についた肥田緒里恵と西本優子がまず取り出したものは、終わったばかりの『全日本レディース3C』の結果表だった。
12度目の全日本選手権優勝から、世界選手権4連覇へ。肥田緒里恵
すぐにアベレージを確認する。肥田はそこで初めて自分の数値を知ったが、西本より下なのは見る前からわかっていた。
「去年は西本さんに最後で負けたので、今回は直接対決を制して優勝できて素直に嬉しい......けど、せっかく今年はハイレベルなフォーマットになったのに、それに見合うプレーができなかった。西本さんは大会を通じて私よりよく当てていたので、自分が『ただ優勝しただけ』のように思えて少し残念ですよ」
そこまで冷静に語れるのは12回目の優勝だからなのか。それとも約2ヶ月後に迫った「3年越しの晴れ舞台」に向けてもう気持ちを切り替えているのか。そう、11月に日本で初めて『世界レディーススリークッション選手権』が開催されるのだ。
'04年の第1回大会(スペイン)から2年に一度、'06年(オランダ)、'08年(トルコ)と3回行われてきて、その全てに優勝したのが肥田その人。3連覇達成から丸4年経ってしまったが、ようやく時計の針が動き出す。もちろん、肥田は4連覇を狙う。
西本優子。肥田も「もう世界のメダルが見えている」と認めている
一方、西本優子は、'04年、'06年と世界選手権に出場するもメダルには届かず、'08年は国内選考会で落選してしまったため、5年もの間「次」を待ち続けた。その期間が彼女をさらに強くした。『全日本レディース3C』で'09年2位(優勝は肥田)、'10年2位(同左)、そして昨年はファイナルで肥田を破って待望の初優勝。日本一になった西本を肥田は「世界選手権でも間違いなくメダル争いに入ってくるだろう」と認めている。
ここにもう一人、東内那津未が加わる。東内は一昨日(26日〈日〉)の、全日本レディース3Cで3位(※日本代表選考会を兼ねていて、初めから出場権を有する肥田、西本を除くと1位)。名門『ビリヤード小林』で鍛えられた今が伸びざかりのプレイヤーだ。
食事の席にはその東内もいて関係者と談笑している。その光景をにこやかに眺めつつ、「恐らく世界選手権は」と肥田が語り出す。
「オランダのT・クロンペンハウエルが最大の障壁でしょう。アベレージで1.0近く出してくると思います」
クロンペンハウエルは以前から肥田がよく世界大会でキューを交えてきたトップ選手で、近年さらに力を付けてきたという。アベレージ1.0近く。その数値が真ならば、日本勢も全く安泰ではない。全力疾走は当たり前。加えて一つ秀でたものがなくてはならない。